泌尿器科情報局 N Pro

症例025-2

解説

腰部脊柱管狭窄症の男性患者さんの尿閉の精査目的にUDSが行われました。腰部脊柱管狭窄症を尿閉の原因としてよいでしょうか。

UDS

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1. 記録状況
EMGの波形が出ていますが、ポンプの作動時に波形が出ている通り、ポンプのノイズを拾っているだけで、全く記録ができていません。  
膀胱内圧、腹圧はおおむねきれいに記録されており、サブトラクションはわずかにずれがある程度であり、Pdetはきれいに測定できています。
カテ解放とある部分では、Pdetが上昇していますが排尿できず、途中で注入用のカテーテルを開放して膀胱内の尿をQuraへ排出しています。

2. 蓄尿期
Capacity 250ml
Compliance わずかにPdetの上昇があり、250ml/10cmH2O=25ml/cmH2Oと軽度のコンプライアンス低下があります。
DO なし
尿意 正常パターンです。

3. 排尿期
Qmax 排尿できていません。
PVR 排尿できていません。
Pdet 排尿期に入って排尿を指示され排尿をしようとしていますが、うまく排尿が始められず、Pdetの上昇がみられません。そこで再度注入を再開したところ、それに反応するようにPdetの上昇が始まりました。圧は120cmH2Oを超えています。自排尿できず、カテーテルを開放して膀胱内の尿を排出することで、膀胱内圧は下がっています。
腹圧 排尿をしようとして、何度か腹圧をかけていますが、うまく排尿が始められませんでした。Pdetが上昇してからはわずかに腹圧の上昇がみられる程度です。

ノモグラム

Qmaxは0で、最大のPdetは120を超えていますので、カテーテル開放前の状態では閉塞度はVI。排尿筋収縮力はN-と判定されます。なおカテーテルを開放した後の収縮力もN-に判定されます。カテーテルを開放する際には排尿できずにあきらめているので、患者さんは排尿しようとしていないかもしれませんので、本来はカテーテル開放時の収縮力の判定は参考値としないといけません。

UDSサマリー DO- DU- BOO+

尿意はあるものの排尿が始められないことは、UDSのような非日常的な環境では、正常と思われる患者でも十分に起こり得ることです。しかし、このようなことが日常でも起こっているために排尿できていないのであれば、UDSでもそれが再現されているだけであり、有意な所見として採用するべきかもしれません。この患者さんでは、普段から排尿が不十分であり、排尿開始を傷害しうる脊髄疾患を持っているため、もしかすると排尿開始ができにくい病態があるのかもしれません。あくまでも可能性があるというだけであり、このUDSだけからは断言はできません。

Pdetは非常に高い圧まで上がりましたが、UDSでは排尿ができませんでした。よって非常に強い下部尿路閉塞があると判定されます。このUDSでは括約筋筋電図も、また透視も行っていませんので、これだけですとDSDとは鑑別ができません。そこで、さらに検査を追加しました。