泌尿器科情報局 N Pro

症例031-3

解説

陰茎絞扼症のために尿閉となった虚弱男性患者さんです。

幸い3年前に当科の受診歴があり、その時点でははっきりとした尿排出障害を認めず、その後も排尿障害を来すような疾患の罹患が無かったことから、尿閉の原因は陰茎絞扼症と判断できました。尿閉による膀胱過拡張によって排尿筋収縮力は低下してしまいましたが、時間の経過によってある程度は回復することが期待できます。前立腺はそれほど大きくないため、十分に自排尿へ復帰できる可能性があると判断し、間欠導尿で自排尿の回復を待つという方針としました。

経過
入院後2週間の時点で尿道カテーテルを抜去し、間欠導尿での管理に移行しました。
陰茎は一部壊死し、冠状溝部に尿道皮膚瘻ができてしまいました。

カテーテル抜去後、約1ヶ月の経過で、亀頭の壊死部分は脱落しましたが、それほど変形を来すこと無く治癒しました。亀頭部の尿道は閉鎖してしまい、冠状溝部の尿道皮膚瘻があらたな外尿道口となりました。

当初は尿意も自排尿も全くありませんでした。定時で間欠導尿を行いましたが、導尿に先立ち排尿誘導を行いトイレへの移動を定期的に行いました。徐々に尿意が出現、その後自排尿が出現し始めました。残尿量は徐々に減少していき、残尿量が100mlを切った時点で間欠導尿を離脱しました。

退院後は、介護力の問題があり排尿誘導は不定期に行う形となりましたが、おおむねまとまった排尿が得られており、残尿も多少増加したものの200ml前後で安定した状態が維持できています。

膀胱エコー

半年ほどした時点で、亀頭の変形はほとんどわからない状況となり、尿道皮膚瘻の狭窄が軽度ありますが、数回ブジーを行っただけで、それ以上の狭窄にはならず経過しています。