泌尿器科情報局 N Pro

症例035-2

解説

10年前にTURPを行った患者さんが、尿閉で入院しました。

尿閉の患者さんで考えるべき事は、腎機能電解質、感染、尿閉の原因、治療および予後、そして排尿管理です。

前日に導尿していることもあり、入院時には腎機能障害は軽度で、電解質異常はありませんでした。食事もとれていました。しかし、入院後に発熱があり、TAZ/PIPCによる抗生剤治療を開始しました。後に尿培養からキノロン耐性E.coliが検出されました。

感染の影響によって血糖コントロールが悪化し、内分泌内科に依頼し、インスリンによる血糖管理が行われました。

また認知機能低下の疑いがあり、高齢総合内科に依頼し、アルツハイマー型認知症の疑いが強いとの診断になりました。

膀胱内に1200mlもの尿が貯留し、両側水腎症となっているため、膀胱は過拡張の状態で膀胱内圧もある程度高値と思われます。膀胱排尿筋は障害をうけて収縮不全となり、当面の間、自排尿は難しいと思われます。感染も来しており、しばらくは尿道カテーテル留置で排尿管理を行うことにしました。

さて、尿閉の原因ですが、TURP後であり、CTでは膀胱頚部、前立腺部尿道は開いており、膀胱頚部狭窄や前立腺再肥大の可能性は低いと思われます。TURP後なので尿道狭窄の可能性は否定できませんが、急性尿閉の原因としては考えにくい上、問題なく導尿ができていることから否定的です。よって下部尿路閉塞の可能性は低いと予測され、神経因性膀胱による尿閉を疑います。

認知機能の低下が疑われる状態であったため、正確な評価とはいえませんが、めだった下肢の麻痺は認めず、歩行もほぼ問題なく可能でした。

引き続き尿路の再評価と神経系の画像診断を行いました。UDSは膀胱過拡張の直後であり、排尿筋無収縮が予測されるため行いませんでした。

前立腺エコー再検

膀胱鏡

下部尿路閉塞はこれで否定されました。

脳MRI

軽度の海馬の萎縮と陳旧性脳梗塞を認めましたが、急性期の脳梗塞はありませんでした。

腰椎MRI

重度ではありませんが、腰部脊柱管狭窄を認めます。

ここまでの評価で、神経因性膀胱と診断しました。

感染がコントロールされた時点で、尿道カテーテルを抜去し、間欠導尿による尿路管理としました。自己導尿を指導しましたが、2週間の懸命の指導にもかかわらず、一向に習得の気配がみられず、自己導尿はあきらめるほか有りませんでした。

さて、どうするとよいでしょうか