泌尿器科情報局 N Pro

症例035-3

解説2

10年前にTURPを行った患者さんが尿閉となり入院しています。膀胱鏡で下部尿路閉塞は否定され、重度ではないですが腰部脊柱管狭窄がありました。認知症があるため自己導尿指導を行いましたが習得はできませんでした。

この方の自排尿の可能性を考えましょう。そのためにはこの方の尿閉となった経緯を考える必要があります。入院の3日前から便秘がありました。便秘はどうなったのでしょう。その点を詳しく聴取したところ、入院日に大量に排便があったとのことでした。そういう目で再度、入院時の腹部CTを診てみると、直腸が浮腫状となっていました。

腹部CT

となると、腰部脊柱管狭窄が悪化して尿閉となった可能性もありますが、便秘が尿閉の引き金となった可能性も否定できません。もし便秘が尿閉の引き金となっていたとすれば、現在の排尿障害は尿閉時の膀胱過拡張が原因であり、今後ある程度膀胱収縮力が回復して自排尿が可能となるかもしれません。よって、できれば1~2ヶ月程度は間欠導尿で自排尿が回復してこないか様子を見たいところです。そこで、妻に期間限定で間欠導尿を依頼し退院としました。

退院1ヶ月後、尿閉から約2ヶ月後の時点で、自排尿が回復し、導尿を離脱することができました。

腹部エコー

整形外科に腰部脊柱管狭窄について相談しましたが、下肢の症状がないため経過観察となりました。