泌尿器科情報局 N Pro

症例041-2

解説1

認知症の前立腺肥大症患者さんが尿閉となり、尿道カテーテル留置をしたところ肉眼的血尿が出現しました。

尿閉の解除後に肉眼的血尿を来すことは珍しくはありません。間質性膀胱炎の患者さんに水圧拡張をした場合、拡張を解除後に五月雨様出血を来しますが、尿閉の解除後にも同様の出血を来すことがあります。しかし、尿閉解除後の出血では、カテーテル閉塞を来すほどの出血を起こすことは少なく、貧血となることもまれです。

この症例の場合は、もっとシンプルな理由が考えられます。認知症のためにカテーテルをけん引してしまうことで、肥大した左右の前立腺腺腫が引き裂かれるような形となり、出血を来していると予想されました。カテーテルの固定等で対応を試みていたのですが、うまくいかず、結局尿道カテーテルを抜去し、自己導尿で対応することとしました。
認知症のために導尿の必要性を理解できず、毎回導尿に一人、押さえつける役に2人の合計3人がかりでの導尿となりました。その後は、新たな出血はなくなり、血腫の排出後は肉眼的血尿は消失しました。

エコー

 

入院中に転倒を2回繰り返したこともあり、尿閉の原因を検討するため頭部MRIと腰椎MRIを撮影しました。頭部MRIは以前と変化なく、新規の脳梗塞等は否定されました。腰椎MRIも撮影し問題は指摘されませんでした。

腰椎MRI

さて、尿閉の原因はどのように考えるべきでしょうか。