泌尿器科情報局 N

頻尿の原因2

膀胱の大きさ

膀胱の大きさは個人差がとても大きいといわれています。200mlぐらいから1000mlぐらいまで様々で、正常値を定めることが難しいほどです。膀胱が小さければ1回で貯められる尿の量が少なくなるため、尿の回数は増えます。膀胱の大きさは個人差がありますが、生まれ持った大きさのため、人と比べなければ大きくても小さくてもそれほど困ると感じることはありません。しかし、もともとの大きさから小さくなると、いままでどおりに尿をためることが難しくなってしまうため、尿の回数が増えて困ることになります。

この膀胱の大きさは、年齢とともに小さくなっていくことが知られています。膀胱の壁の線維の量が増えることや、膀胱の壁で作られる物質が膀胱の働きに影響することなどが、原因の一つとして指摘されていますが、根本の原因まではまだ突き止められていません。また、尿を出す力が弱くなりたまっている尿をすべて出し切ることができないために、膀胱が小さくなくても実質的に膀胱に貯められる尿量が減ることで、尿の回数が増える場合があります。このような尿をすべて出し切れない状態は、残尿がある状態と言います。ひどくなると全く尿が出なくなってしまう尿閉という状態にまでなってしまうことがありますので、泌尿器科へ受診が必要な状態です。

膀胱の大きさが小さくなる原因は年齢だけではなく、ばい菌が膀胱の中に入って炎症を起こす膀胱炎という病気でも起こります。数日ぐらいの短い期間で急に尿の回数が増えるのは、このようなばい菌の影響でおこっていることが多いと思います。ただし、神経の病気や他の病気でも急に尿の回数が増える場合もあるため注意が必要です。急な腰の痛みや手足のしびれなどがある場合には、特に注意をしなくてはなりません。また、それほど頻度が多いわけではありませんが、膀胱や前立腺にがんがあるために、尿の回数が増えることもあります。

膀胱の大きさは夜寝ている間は昼間に比べると、1.5倍から2倍程度に大きくなることが多いように思います。夜の睡眠が浅くなると、膀胱の働きも昼間に近くなり膀胱の大きさが小さくなることがあります。不眠症は夜の尿の回数が増える原因のもっとも大きなものの一つです。

学校の試験前にトイレに何度も行った記憶はないでしょうか。膀胱は心の鏡とも言い、心の不安定は尿の回数に影響を与えます。適度な緊張や物事への集中力は尿のことを忘れさせてくれますが、過度の緊張や不安はかえって尿の回数を増やします。面白いテレビを見ている最中は尿のことを忘れていますが、CMになると途端に尿のことが気になってしまい、トイレに駆け込むのは、よくあることではないでしょうか。また尿の我慢に自信がないと、トイレの前を通るだけで、尿のことが心配になりトイレが我慢できなくなります。

過活動膀胱という尿の我慢が弱くなる状態も頻尿の原因になることがあります。過活動膀胱だけが頻尿の原因になっていることもありますが、多くの場合、頻尿には様々な原因が複数影響しています。頻尿に対して過活動膀胱しか原因が思いつかないようですと、なかなか症状の改善は得られません。少し面倒なのですが、膀胱の形や尿たまる感覚、尿量の1日の中での変動、心臓や腎臓の働きや血圧、食事、水分の取り方、飲酒の影響など、様々な評価をしたうえで、頻尿への対処の方針を決めてゆくとよいでしょう。