泌尿器科情報局 N

前立腺肥大症の治療選択2

薬物治療

薬物治療は別のページに解説がありますので、もう少し知りたい方はそちらもご覧ください。

薬物治療のメリットは手軽だということです。とりあえず薬を飲んでみるということが簡単にできます。αブロッカーなどの処方であれば内科の先生にもお願いできることが多いと思います。しかしその裏返しとして、治療効果は手術と比べれば弱めです。尿が出なくなってしまった状態が改善するのは一部の患者さんに限られます。また、薬を使用している間しか効果はなく、飲むのをやめてしまうと効果はなくなってしまいます。つまり薬物治療では薬をずっと飲み続ける必要があります。ただし、症状に波があって調子が良い時には治療の必要がない患者さんなどでは、調子が悪い時だけ薬を飲むという方法も選べます。

カテーテル

カテーテルとは細いチューブを指し、尿道から入れることで膀胱の尿を出すために使います。一般的な状況で前立腺肥大症の治療のためにカテーテルを使用することはごくまれで、前立腺肥大症のために尿が出せなくなってしまった時に使用します。チューブを尿道に入れるというのは、普通に考えてお分かりのように相当に痛みがある行為です。またばい菌も入ってしまいます。そのため、症状をよくするためだけにカテーテルを使用することはまずありません。

カテーテルを使用する方法には2通りあります。一つ目は、尿がたまった時だけチューブをいれて尿をだし尿を出し終わったらチューブを抜いてしまう、導尿という方法です。もう一つは、チューブをずっと膀胱の中に入れ続ける方法で、尿道留置カーテルもしくは、尿道カテーテル留置などと呼びます。病院などでは、バルンもしくはバルンカテーテルなどと呼んだり、フォーリー、フォーリーカテーテル、フォーレなどと呼んだりもします。

治療法の選択

前立腺肥大症の患者さんがどの治療法を選ぶべきかを考えます。カテーテルを選ぶのは尿が出なくなってしまった状況のみです。尿が出なくなってしまった場合には、手術をするか、カテーテルを使用しながら自然に回復するのを待つか、カテーテルを使用しながら内服薬で改善するのを待つかのいずれかの選択を選びます。

一般的な状況では経過観察、内服治療、手術治療の3つのいずれかを選ぶことになります。目標としては、症状の改善または尿が出なくなる尿閉の予防です。当然患者さんの状況によって選ぶべき治療法は異なります。症状が軽く、かつ尿閉になってしまう危険性が低い患者さんでは、あわてて治療する必要はありません。経過観察が妥当です。

一方、症状が中等度から重度の患者さんでは、薬物治療もしくは手術治療を選びます。どちらを選ぶべきかは、いろいろな要因を考えて決めてゆきます。症状が重度の患者さんでは、効果が強い手術を選ぶことになりますし、前立腺が大きい患者さんでも、やはり手術が勧められます。

当然、今現在の患者さんの年齢も大きな判断要素です。若い患者さんであれば、将来ずっと症状で悩むぐらいなら、手術ですっきり治してしまうことが勧められます。一方、高齢の患者さんもしくはほかの病気がいろいろとある患者さんであれば、体に負担のある手術は、気を付けないといけません。もし大きな病気を持っていて残りの人生がそれほど残っていないのであれば、将来に前立腺肥大症が進行して困った事態に陥る可能性は、やや少なく見積もってもよいでしょう。

しかし、元気な時には多少の前立腺肥大症があってもなんとか頑張って排尿できていた患者さんでも、病気になって体が弱った際にうまく排尿ができなくなってしまうこともありますので、元気なうちに完全に治しておくというのも、良い選択になります。