」 ヴィヴァルディ、バッハ以外のバロック音楽
オーベール/4つのヴァイオリンのための協奏曲ト短調
コレルリ/合奏協奏曲ニ長調 作品6の4
コレルリ/合奏協妻曲ト短調 作品6の8「クリスマス」
ジェミニアーニ/合奏協奏曲第12番ニ短調「ラ・フオリア」
テレマン/トランペットと弦楽の為のソナタ ニ長調
パッヘルベル/カノンとジーグ
パーセル/組曲「アプデラザール」
パーセル/組曲「妖精の女王」
ヘンデル/合奏協奏曲ヘ長調 作品6の2
ヘンデル/合奏協嚢曲ニ長調 作品6の5
ヘンデル/合奏協奏曲ニ短調 Op.6−10
ヘンデル/トランペットと弦楽の為の組曲 ニ長調
A.マルチェルロ/オーポエ協奏曲ハ短調
オーベール/4つのヴァイオリンのための協奏曲 ト短調
フランスにはオーベールという名前の作曲家が3人いますが、今宵のジャン・ジャック・オーベール
(1689〜1753) はそのなかで最も古く (一般に老オーベールといわれています) 、また現在最も忘れられてしまっている作曲家です。 しかし生前は18世紀フランスを代表する名ヴァイオリニストでした。 近年、フランスではじめてイタリア風の合奏協奏曲を書いた彼に対する再評価がされつつあり、彼の作品のみによるCDなども発売されています。 しかしオーベールの作品を現代によみがえらせた最大の功績者はジャン・フランソワ・パイヤール氏でしょう。 彼はその合奏団と来日のたびに、ことあるごとにこの曲を演奏し、まだイタリア・バロック中心だった日本の音楽ファンにフランス・バロックの優雅な響きを紹介したのでした。
近年は古楽器によるバロック作品の演奏が全盛ですが、ことこの曲に関してはパイヤール氏によるレコードが絶品です。 ぜひいちど聴いてみてください。
(第16 回定期演奏会プログラムより)
コレルリ/合奏協奏曲ニ長調 作品6の4
コレルりの12曲の合奏協奏曲集・作品6は、バロック期のコンチェルト・グロッソの形式を確立した傑作として、今日でも数多く演奏されています。 同じ時代のヴィヴァルディやアルビノー二の作品が、あのイタリアの青くすみきった空のように明るく、あっけらかんとしているのに比べると、コレルリ先生の作風はあくまでしぶく、上品で・優堆であります。コレルリはこの作品6以外にはほとんど弦楽のための作品を残していませんが、彼の曲は最初の和音が鳴り響いただけで、“あ、コレルリだ
!! ”とわかる程持徴的です。
今育演奏される第4番二長調も、コレルリ独特の和音にはじまる三楽章からなる、優堆な気品をもった名曲です。
(第3回定期演奏会プログラムより)
コレルリ 合奏協妻曲ト短調 作品6の8「クリスマス」
クリスマス協奏曲と呼ばれる作品は、実はこのコレルリの曲の他に、マンフレディーニ、トレルり、ロカテルリといった作曲家たちにも、同じ名の作品があります。 ところが一般には「クリスマス協奏曲」というと他の3人をおしのけて、このコレルリのものが最も有名です。 大体コレルりという人は、バロック期の作曲家としては珍らしく寡作な方で、その残された1曲1曲がみな、珠玉の作品といえるものばかりです。 わが合奏団が、6月のまさに暑い夏にならんとする今日、なぜ「クリスマス協奏曲」を一番最初に演奏しようとしているのか・・・・それは、この曲があまリにも珠玉の名曲なのだからです。
(第1回定期演奏会プログラムより)
ジェミニアーニ/合奏協奏曲第12番ニ短調「ラ・フオリア」
バロック時代を代表するイタリアの作曲家・コレルリ (1653〜1713)は、その優雅な作風で、現代でもなお、多くの愛好者を得ています。
彼の弟子ジェミニアーニ (1687〜1762)も、師の作品から多くの影響を受けました。 コレルリのヴァイオりン・ソナタ集作品5の12曲は、バロック期を代表する名曲ですが、師の死後ジェミニアー二は、この曲集の弦楽合奏ヘの編曲を思い立ち、1726年から28年にかけて完成しました。 コレルりはバロックの作曲家にしては珍しく寡作な方で、弦楽合奏曲も、あの有名な作品6の合奏協奏曲集があるのみです。 そういった意味からも、ジェミニアー二のこの偉業は、コレルりの魅力を現代に伝えるものとして貴重なものであると思われます。
第12番「ラ・フォリア」は、主題と22の変奏からなり、「フォりア」と呼ばれるスペイン風の主題をパッサカリア風に次々と変奏してゆき、音楽が高潮してゆく素晴らしさは、原曲以上にこの弦楽編曲版に心ゆくまでもりこまれています。
(第9回定期演奏会プログラムより)
テレマン/トランペットと弦楽の為のソナタ ニ長調
テレマン(1681〜1767)は、バッハ (1685〜1750)より4歳年上の、当時としてはバッハをはるかにしのぐ名声を博していた、ドイツ・バロック期の作曲家です。 「ターフェルムジーク(食卓の音楽)」をはじめ、歌劇・協奏曲や室内・器楽のあらゆる分野にわたって、膨大な作品の数々を残していますが、困った事に彼の作品にはモーツァルトのケッヒェル番号のような便利な作品番号が全くついておらず、彼の曲の分類には、常に苦労がつきまといます。 筆者もすでに持っているテレマンの曲のレコードをダブッて買ってしまった・・・という体験がしばしばあり、困っています。 (誰かテレマンの研究をして、便利な作品番号をつけてくれー
!! 大阪のテレマン・アンサンブルさんはどうしてるんだろう?)
この「トランペットと弦楽の為のソナタ」は、ドレスデン大学図書館に残されていた原本をもとに、有名なドイツのオーボエ奏者、ヘルムート・ヴィンシャーマンが編纂した楽譜によっています。 曲は3楽章からなり、中間楽章では独奏トランペットは休み、弦と通奏低昔のみで奏されます。 華やかな中にも、優雅ざが感じられる名曲です。
スピリチユオーソ(アレグロ)〜 ラルゴ 〜 ヴィヴァーチェ
(第13回定期演奏会プログラムより)
パッヘルベル/カノンとジーグ
パッヘルベル(1653−1706)は、バッハよりももひと世代先輩のドイツのオルガン奏者でした。 バッハの父と親交をもち、バッハの作風にも大きな影響を与えたといわれています。
この「カノンとジーグ」は、もともとはオルガンの為に書かれたのですが、現在では弦楽合奏の名曲として世界的に広く愛されています。 「カノン」は、「レ・ラ・シ・ファ・ソ・レ・ソ・ラ」という8つの通奏低音のうえに、3つにわかれたヴァイオリンが、つぎつぎに同じ主題を、まるで追いかけっこをして演奏するように、巧みに書かれています。 この技巧がもたらす音楽的な充実感はたとえようがありません。
「ジーグ」はこの有名な「カノン」とセットになって出版されているのですが、「カノン」ほどの知名度はありません。 しかし、この機会に是非お楽しみいただきたいと思います。ジーグというのは、この時代の組曲でしめくくり専用に用いられた舞曲で、この曲も生き生きとした曲想がたいそう魅力的です。
(第11回定期演奏会プログラムより)
パーセル/組曲「アプデラザール」
今世紀初頭、イギリス音楽界にエルガー、プリトゥンという優れた作曲家が、たて続けに現われた時「ついにわがイギリスも、パーセル以来の新たな天才作曲家を得る事ができたのだ1」と随分騒がれたものでした。 それはど後期ロマン派の頃のイギリス音楽界の地盤沈下は著しく、ブラームス・ワーグナーらが大活躍していたドイツや、チャイコフスキー、ロシア五人組を輩出したロシアの盛況を、ただじっと指をくわえて眺めているといった状況だったのです。(しかしこの頃のイギリスに、まったく作曲家がいなかったわけでは勿論ありません
! 数多くの交響曲を書いたスタンフォード、重厚な作風から「イギリスのプラームス」の異名をとるサー・ヒューバート・パリーなど、筆者のこよなく愛する作曲家たちが数多くいたのですが・・・ただ人気が出なかっただけなのです。 パリーには「イギリス組曲」などという素敵な弦楽作品もあるので、パストラーレの皆さん、機会があったら是非一度取りあげてみてくださいね。)
しまった!曲とは関係の無い事ばかり書き続けてしまった。 パーセル(1659?〜
95 )の事も書かなくっちや・・・。 ですから冒頭に書いたように、バロック終末期におけるパーセルの人気というのは絶大なものがあったわけです。彼はその決して長くはなかった人生のうちに、じつにおびただしい作品の数々を残しています。 なかでも「ディドとエネアス」のような、今日でもひんぱんに上演されるような歌劇・舞台作品に、多くの傑作を残しました。 今宵の「アプデラザール」組曲も、付随音楽として書かれたものの何曲かを組曲としてまとめたもので、「ムーア人の復讐」という恐ろしい別タイトルを持っています。 この組曲で待筆すべき事は、皆さんよくご存じのように第2曲の「ロンド」が、前述したプリトゥンの有名な「青少年のための管弦楽入門」のテーマの原曲である、という事です。 ブリトゥンがパーセルの作品を自らの主題として用いたという事は、パーセルに対する畏敬の念の現われであるとともに、冒頭でふれたような彼のイギリス楽壇における期待度という点を考えると、たいそう興味深いものがありますね。
第1曲「序曲」〜 第2曲「ロンド」〜 第3曲「アリア」〜 第4曲「アリア」〜
第5曲「メヌエツト」〜 第6曲「アリア」〜 第7曲「ジーグ」〜 第8曲「ホーンパイプ」〜
第9曲「アリア」
(第15回定期演奏会プログラムより)
パーセル/組曲「妖精の女王」
バロック音楽といえば、日本ではドイツ、イタリアのものがポピュラーですが、他にも例えばチェコ、フランスそしてイギりス等の各国にも、すぐれた作品が多数残されているのです。 17世紀イギリス・バロックを代表する作曲家パーセル
(1659?〜1695)の名は、一般にはブリトゥンの「青少年のための管弦楽入門」(“
パーセルの主題による変奏曲とフーガ ”) というサブ・タイトルがついています)によって、またちょっと通の人々には、最近日本でもよく上演されるようになった歌劇「ディドとエネアス」等によって、おなじみであろうと思います。
パーセルは36才という若さで、この世を去りましたが、歌劇・付随音楽等の分野で数多くの名曲を残しました。 今宵の組曲「妖精の女王」は、1692年に初演された同名の歌劇のなかから9曲を、第1・第2の弦楽合奏用の組曲にまとめたものです。 歌劇はシェークスピア原作で、メンデルスゾーンの劇昔楽でも有名な「真夏の夜の夢」を題材とした、エキゾチックな内容ですが、音楽はいかにもパーセルらしい、イギリス的な気品にあふれています。
第1組曲 前奏曲 〜 ロンド 〜 ジーグ 〜 ホーンパイプ 〜 妖精たちの踊り
第2組曲 アりア 〜 猿の踊り 〜 夜の従者たちの踊り 〜 シャコンヌ(中国の男と女の踊り)
(第9回定期演奏会プログラムより)
ヘンデル/合奏協奏曲ヘ長調 作品6の2
ヘンデル (1685〜1756)の作品6として、1740年に出版された12曲の合奏協奏曲集は、彼がそれまでの病いを克服し、新たな創作意欲に燃えている頃の作品で、この作曲家の器楽曲のなかでも代表的な傑作とされており、ヴィヴァルディの作品3、コレルリの作品6などと共に、弦楽合奏の貴重なレパートリーとなっています。 この作品6の2は、全曲に牧歌的な美しさがあふれており、ドイツの音楽学者クレッチュマーという人は「この曲を聴いていると、ある秋の日の朝、森の中を家路めざして、さ迷い歩いているような気持におそわれる」と述べています。 ヘンデルの、密度の高い形式の中にあふれる麗しい抒情を、どうか存分にお楽しみください。
曲は「ゆっくっり 〜 早い 〜 ゆっくっり 〜 早い」の4楽章から成っています。
(第4回定期演奏会プログラムより)
ヘンデル (1685 〜1756)の作品6として1740年に出版された弦楽のための12曲の合奏協奏曲は、彼がそれまでの病気を克服し新たな創作意欲に燃えている頃の作品で、コレルリによって創始された合奏協奏曲
(コンチェルト・グロッソ) の様式が、ヘンデルによって確立されたと評価されている傑作です。 何度もパストラ−レのプログラムに書き古した表現を、飽きもせずまたここに記させていただきますが、「弦楽合奏を志す者にとっては、ウィヴァルディの作品3、コレルリの作品6などと共に貴重なレパ−トリ−」になっています。
今宵演奏される第2番は、全曲を通して牧歌的な叙情があふれており、ドイツの音楽学者・クレッチュマ−は「この曲を聴いていると、ある秋の日の朝森の中を家路をめざしてさまよい歩いているような、そんな気分にさせられる」と述べています。
ところで近年は古楽器奏法の研究がブ−ムといえる位盛んで、前述のパ−セルやこのヘンデルの作品も最近では古楽器による演奏がほとんど・・・というのが、まるで当り前のようになっています。 しかし、本当にこれでいいのでしょうか?
例えばグルックの作品を聴く時、古楽器による演奏よりも、現代奏法によって演奏された方が、より作品に込められた劇性を素直に感ずる事が出来るのは、誰の目にも明らかですし、ヘンデルの合奏協奏曲にしても、フルトウェングラ−の時代からベルリン・フィルでは数多く大編成で演奏され続けており、古楽器では決して得る事の出来ない精神的な感動を多くの人々に与え続けているのです。
「バロックの作品は古楽器で演奏するのが当然」という風にかんたんに決めつけず、いろいろな演奏様式による可能性といったものに、もっと目を向けるべき時に来ているのではないだろうか?というのが、筆者の意見です。 現代奏法といっても、今日プロが演奏に使用しているのは、ストラディヴァリウスを初めとしてそのほとんどがいわゆる古楽の時代に制作されたものなのですし、だいいちその作品が作曲された頃の演奏を聴いたことのある人は、現在一人もいないのですから!
そういった意味からも、今宵は現代奏法によるパ−セル、ヘンデルの世界を心ゆくまでお楽しみいただきたい、と思います。
第1楽章「アンダンテ・ラルゲット」 〜 第2楽章「アレグロ」 〜
第3楽章「ラルゴ」 〜 第4楽章「アレグロ・マ・ノン・トロッポ」
(第15回定期演奏会プログラムより)
ヘンデル/合奏協嚢曲ニ長調 作品6の5
ヘンデル (1685−1759)の合奏協奏曲集・作品の12曲は、弦楽合奏を志す人々にとって大切なレパートリーのひとつです。(もはや大マンネリ気味の、おなじみの解説パターンです)
ところで、今宵のプロに、ドイツ・バロックを代表する二大作曲家、バッハ,ヘンデル(彼は途中、イギリスに浮気?しましたが)が並んだことは、非常にすばらしい企画だと思います。 しかもこの2人は、なんと同じ1685年の生まれなのです。 アーヘンの温泉で、持病の治療に成功し、音楽界にカムバッグしたヘンデルは、債権者たちの度重なる督促の重圧にもめげず、わずか一か月の間にこの名作・合奏協奏曲集作品6の12曲を書きあげてしまいました。 今宵演奏される第5番はなかでも持に有名で、生き生きとした力強く堂々たる曲想をもち、完成された作曲技法とともに、その精神の充実を感じざせずにはおきません。 しかしここで御来場の皆様に、ひとつ内緒話を御披露いたしましょう。 じつは、この曲の最初の2つの楽章と終楽章の主題は、ドイツ・バロックの作曲家・ムファット(1653〜1704
)のものを、ヘンデルが無断で借用したものなのだそうです。 昔はこういった事には、たいそう大らかだったのですね。 もしこれが現代ならば、草葉の陰の芥川先生がどんなに嘆かれることでしょう・・・合掌。
曲は「ゆっくり 〜 早い 〜 ゆっくり・・・」という順で、次の6曲からなっています。(拍手のタイミングに御注意ください
! ) ラールゴ 〜 アレグロ 〜 プレスト 〜 ラールゴ 〜 アレグロ 〜 メヌエット(ウン・ポコ・ラルゲット)
(第9回定期演奏会プログラムより)
ヘンデル/合奏協奏曲ニ短調 Op.6−10
ヘンデル (1685〜1759)の合奏協奏曲作品6の12曲は、弦楽合奏を志す者にとっては、欠かすことの出来ない重要なレパートリーのひとつです・・・とは、以前たしかパストラーレのプログラムに同じような事を書いたような気がするけど・・・あれ? コレルりの作品6のことを書いた時だったかな? それとも、ヴィヴァルディの作品3かな? まあ、どれも私共には欠かすことの出未ないものばかりです。 この作品6の12曲は、長調・短調それぞれ6曲ずつから成っています。 短調のものが悲しそうに聞こえるのは、人間の生理的本能ですが、このニ短調作品6の10は、悲劇性という点では曲集の中でも最も際立っているように思われます。 曲は、アウフタクトの3連音符がまことに特徴的な序曲で始まりますが、私たちはその最初の音を耳にしたとたん、そのドラマティックな曲想に思わず息をのんでしまいます。 かつて、指揮者フルトヴェングラーはこの序曲をまるで「宇宙がなだれおちる」ように表現しました。 つづく第2楽章アレグロは、ヘンデルのフーガにおける見事な展開をみせます。 この悲愴感は、第3楽章エアで切々たる抒情となり、第4楽章アレグロ・第5楽章アレグロでは、見事な対位法的技術の展開を示すのですが、第6楽章で突如、音楽はDur(長調)に変わり、まるで平和な変奏曲・・・。 どうしてヘンデルはここにこのような終曲を持ってきたのでしょうか。 筆者はこの終曲だけいつもつけ足しのような気がするのですが、今青の聴衆の皆様はどのようにお感じになりますでしょうか?
( 因みに前述の指揮者・フルトヴェングラーは、最後の二つの楽章の順番を逆にすることにより、曲が悲愴感のうちに終わるようにしていました。)
(第5回定期演奏会プログラムより)
ヘンデル/トランペットと弦楽の為の組曲 ニ長調
今から約20年も前になるでしょうか、ふと何気なくスイッチを入れたテレビの画面に、筆者の目は釘づけになってしまいました。 そこには、めがねをかけ、あごひげを一杯たくわえた、ちょっとヤセ形でまるで伝道者のような顔をした男が、えらく長いラッパを、さもラクそうに吹いていたのです。 その音色の澄んで、なんと美しかったこと
! ・・・その人こそが、現代を代表するバロック・トランペット奏者、エドワード・タールでした。 それまで、ヘタなブラスバンドの「ンパ・ンパ・ンパパパッパ」というラッパしか聴いた事のなかった私にとって、それはまったく新鮮な驚きでした。
バロック時代のトランペットには、現代のようなバルブがなく、高い音域でしか旋律が吹けなかったといいます。 当然そこには、少なからぬ技術的な困難さがつきまとっていたのですが、当時のトランベット奏者たちは果敢にそれに挑み、バロック・トランベットの黄金時代を築きあげていきました。
ヘンデル(1685〜1759)の「トランベットと弦楽の為のソナタ」は、1735年に「水上の音楽」のタイトルをつけて発表されました。 その後何度か改訂・出版を重ねましたが、今宵演奏される版は、前記のエドワード・H・タール(1936〜 )が編纂したものを使用しております。 全部で5つの楽章からなり、ヘンデル特有の華やかな響きにみちた、魅力あふれる曲です。
序曲 〜 ジーグ 〜 エアー 〜 マーチ(ブーレ)〜 マーチ
(第13回定期演奏会プログラムより)
A.マルチェルロ/オーポエ協奏曲ハ短調
ふだんマルチェルロというと、このアレッサンドロ(1684〜1749 )の弟、ベネディット・マルチエルロの方が有名で、作品の数も多いのです。 アレッサンドロはアマチュアの音楽家で、このオーボエ協奏曲も、もとはバッハのチェンバロ用編曲によって知られているだけでした。 しかし、近年の研究によって、アレッサンドロの手によるものということが判明し、また映画「ベニスの愛」の中で、この曲の哀愁にみちた第2楽章が使われたことなどにもより、今やバロックを代表する有名な曲になりました。 上記の理由から、調性もニ短調とハ短調の2種類の版がありますが、この曲の深い味わいを出すには、今宵演奏されるハ短調のものが、よりふさわしいと言えると思います。
第1楽草の冒頭、ユニゾン(全員が同じ主題を奏する)で、やや荒々しい主題が奏されたあと、すぐにオーボエの哀愁にみちた旋律が登場し、私たちはバロックの限りないあこがれの世界にひきこまれてゆくのです。 そして有名な第2楽章・・・ヴァイオリンの束の間の不協和昔が解決したあとの、オーボエの奏する旋律のなんと哀しみに満ちていることでしよう
!! そして曲は、生命感あふれる舞曲風の終曲によって締めくくられていくのです。
1.アレグロ・モデラート 〜 2.アダージョ 〜 3.アレグロ
(第7回定期演奏会プログラムより)
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