「Best of My Love〜説得に最上の愛を込めて〜」

TWO of Swords Reprise:(オウガバトラーさんのHPに投稿した作品の続編です)

パートI(カチュアが攻略マップに登場しなかった場合)

「近寄らないでッ」
 カチュアが震えながら、後ずさりする。
 その怯えた様子を見ながら、ここまで追いつめてしまったのは自分なのか、とデニムの心はキリキリ痛んだ。
 暗黒騎士団が立ち去ったあとのバーニシア城。
 1人取り残されたカチュアを捜し、ようやく見つけたデニムに彼女がかけたのは拒絶の言葉だった。

「・・・姉さん・・・」
 カチュアを安心させるようにそっと、デニムが一歩踏み出す。
 すると、さらに後ずさりしたカチュアの後ろに積んであった何かがなだれを起こした。
「あ、きゃあっ・・・」
「・・・?」
 カチュアが慌てて積み直している、そのモノを見た途端、思わずデニムは叫んだ。
「ああッ、そ、それは、教会に隠してあったえっち本?!」

「デニム・・・・、やっぱりあなたは、・・・。」
「ち、ちがうよ。ヴァイスだよ。2人で乏しいおこづかいを溜めて、・・(はっ)  で、でも、姉さん、まさか・・・。」
「あ、あら、読んでいないわよ。でも、本は大事にしなさいって教わっていたわよね。
 ・・・この本をどうするつもり?」
「どうするって・・・。ぼくは姉さんを迎えに来たんだよ。本じゃなくて。
 本は僕ら、じゃなかった、ヴァイスのものだし。大事にはしてたんだけどな。」

 いささか言い訳がましい口調だったが、気を取り直したデニムがもう一度説得を始めると、カチュアがきっ!とデニムをにらんだ。

「うそっ!じゃどうしてこの本を置き去りにしたの?
 どうしてゴリアテから持ち出さなかったの?」
「そうさ。確かに僕はこの本を置き去りにしたよ。
 でも、それはギルダスさんやカノープスさんにとられたくなかったからなんだよ。」
「うそよッ!もっといい本がオークションで手に入ったからでしょッ?!」

「……へ?」

 考えつかなかった展開に首をかしげるデニムは思わず間抜けな声を出した。 彼の脳裏に、どこへ行っても同じ服、同じ顔の、あの例の(無愛想な)オヤジの姿がオーバーラップする。

「オークションって?お店で頼むアレ?タコヤキとかの?」
「そうじゃなくて最近流行のやっほ〜ハトねっと……!あッ!!」

 その時、1羽の伝書鳩が窓から飛び込んできた。
 途中まで説明しかけたカチュアがそれを見て顔色を変え、鳩に飛びつく。
 デニムの疑問に答える事など忘れ去ってしまったようだ。

「ちっ!」
 通信管の中の紙に舌打ちをしたかと思うと、カチュアはきびすを返し、猛然とそばのメモ紙に何かなぐり書きを始める。  棄てられた通信紙をデニムは拾って読んでみた。

『残念!他の人があなたより高値をつけました。』
 その紙には、でかでかとそんな文字が書かれている。

「商品名は、・・・『ろまんちっく★ぱーと2★いじめちゃイヤン♪』?
 あ、これ、僕…じゃない、ヴァイスが欲しがってたやつだよッ!」

 カチュアが返信用の通信管を付けようと鳩をがばっと掴んだその瞬間、さらに別の鳩が窓から中に入ってきた。
「なっ……ま、まさかッ。」
 新しい鳩の首を絞めんばかりにして通信管をむしり取り、読んだカチュアの形相が見る見るうちに変わっていく。

「くっ!終了間際に、かけこみ入札をするなんて!  10ゴート差で落札されちまったわッ!」
 ふりむきざまにデニムの首をも絞めかからんばかりである。

「きっとまた”ゴリアテのぼくちん”なんていうふざけた名前の奴にとられたんだわ。
 ―――デニム?まさかあなたのことじゃないでしょうね?」
「違うよ、姉さん!僕は姉さんと競り合いたくない!
 たった一人の姉さんと競り合いたいなんて思うわけないッ!
 さっきの本だって18歳になったら買えると思って僕も楽しみにして・・げふんっ!
 あー、こ、これからは、姉さんに協力するために僕のおこづかい全部渡すよ。
 だから、こんなせこい入札はせずに、今度からはどーんと高値を入札しなよ。ね?」
「デニム・・・。(うるうる♪)迷惑かけて・・ごめんね。」
 このとき、血がつながっていない二人に新たな連帯感が生まれた。

 ―――これも説得の成功例の1つかもしれない(^^;

 ちなみにローディスが海を渡ってまで狙っていたドルガルア王の遺産とは、オンナ好きの王の、18禁でマニア垂涎の本、 「あんなことやらこんなことやら」(すいません、作者は全然タイトル思いつきませんっ)のコレクションだったことがこの後に判明。
 プリンセスカチュアはその後「亡き父ドルガルア王の築いたコレクションを取り戻しましょう!それから、私と競ったオークション荒らしにも制裁を!」とハイム城攻略の前に演説した。

 しかし、上層部の判断で一部演説の内容が変更して兵たちに伝えられたことは、一般にはあまり知られていない。

献辞:
ネタの提供者のね○○○さんに感謝と愛を込めてこの小品をささげます。
楽しい話題を提供してくださって本当にありがとうございます♪
あなたがいなかったら、この作品は生まれませんでした(強調)。
・・というわけで、責任の一端はええ、そのう・・・(逃走)