泌尿器科情報局 N Pro

症例005-4

解説

神経因性膀胱で尿閉となり、長期に尿道カテーテルを留置している患者さんです。施設では間欠導尿ができないのですが、カテーテル抜去を希望されています。本来であれば尿道カテーテルを試しに抜いてみるのが一番なのでしょうが、施設にその判断をお願いする事は難しそうです。前回UDSとその後の排尿機能の経過、および神経疾患の進行を考えると、間欠導尿なしでの管理はほぼ無理だろうと予測されるため、ある意味ご家族にご理解していただくためにUDSを行ったわけです。

UDS2

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1. 記録状況
Pves、Pabdともに、見慣れた推移ではありません。Pabdは徐々に低下していっており、カテーテルの不具合があるかもしれません。ただ、細かい圧の変化は比較的PvesとPabdで一致していますので、大きな圧の変化をのぞけば、測定はそれなりにできていると考えてよいと思います。

2. 蓄尿期
Capacity 300mlまで注水していますが、失禁があるため膀胱は100~150mlぐらいしか膨らんでいません。
Compliance 注入後すぐに膀胱内圧が上昇しています。注水を止めると多少圧が下がりますが下がりきりません。よってコンプライアンスは不良です。
DO Pvesの上昇とともに尿失禁があります。DO+となります。
尿意 尿意を理解できません。

3. 排尿期
失禁はあるものの、排尿は出来ていません。おおむねPvesが40cmH2Oで失禁があるようです。

UDSサマリー DO+ DU不明 BOO不明

Pabdがカテーテルの不具合のためかずれていってしまっていますので、PdetではなくPvesをみて判断をします。注水を開始してすぐにDOが出現し、その後はおおむね40cmH2O前後で、失禁が起こっています。このまま、導尿を行わなければ、溢流性尿失禁の状態であり、蓄尿圧40cmH2Oで維持されると思われます。

長期カテーテル留置中に行った検査であるため、抗コリン剤を投与したり、しばらく間欠導尿を行ったりすることで、多少は変化があるかもしれません。しかし現在、管理上もっとも避けるべきである高圧蓄尿のパターンとなっているため、間欠導尿なしでの管理はかなり危険性が高いと言えます。間欠導尿を行う選択ができないため、結局はその後も尿道カテーテル留置での管理が行われることになりました。