真木不二夫・ディスコグラフィー2/テイチク篇

(写真/テイチクSPレコードより)

 (2024.4.19 改訂)
真木不二夫/ディスコグラフィー
 ポリドール篇  依頼録音その他

真木不二夫/ホームページ

 (制作 岡崎 隆)



昭和20年代を中心に活躍し、紅白に4度出演した真木不二夫さん(1919〜68)のディスコグラフィー(テイチク篇)です。
真木不二夫さんについてよくご存知の方、ぜひ情報をお寄せ下さい。
本ページへのお問合せ、ご意見等はこちらまでお願いします。(きづかい)

本HPに未記載だった「今宵かぎりの港町」(昭和30年10月)についての情報を加えました。

真木不二夫の芸名は時期によって「小谷潔」(戦前)、「眞木不二夫」(昭和24年〜27年2月)、「眞木(真木)富二夫」(昭和27年2月〜29年9月)、「真木不二夫」(昭和29年12月〜31年) など様々な表記があり、複数の表記が混在していた時期もあったようですが、それぞれの曲目のレーベルに記載に従いました。
なお一部で見受けられる「富士夫」表記は、公式ではないようです。
本ディスコグラフィーはレコード番号順を基本としておりますため、リリース年月順とは異なる場合があります。

(おねがい)
テイチク退社後の昭和34年に録音されたNHKラジオ歌謡「旅情の歌」 (昭和34年3月/真木不二夫/R-686/松阪直美・詩、倉若晴生・曲) についての情報・音源をお持ちの方、是非お知らせください!!



(テイチクレコード/昭和24〜31年)

 戦前のポリドール盤に比べ、真木の戦後のテイチク盤は比較的入手しやすい。ただ初期(昭和24、25年頃)のものは録音自体が今ひとつで、盤の方も状態の良い物に巡り会う事は難しい状況だ。そんな中、「東京レコード」レーベルで再発売されたものは、何故かオリジナルより音が優れているものが多く、ファンには狙い目かも知れない。
(曲名のアタマに「♪」が付いている曲は、かつて宮城県の愛好家の方が自主制作された6枚組CDに収録されていたもの)


♪ 夢をのこして
(昭和24年9月/眞木不二夫/C 724 B東京レコード652/CD=TFC- 22005/テイチク・デビュー曲/清水みのる・詩、倉若晴生・曲、編/裏面=伊豆の夢(霧島昇/東京R)

 一見、デビュ−曲にふさわしくないタイトルにも思われるが「戦争によって断ち切られた歌手への夢を、ずっと心に持ち続け、残していたのだ」という真木の心情を表していると取るべきだろう。短調のメロディーは逞しく、眞木の歌声も安定感に満ちている。東京レコードの復刻SPはノイズが少なく、音質の良いものが多い。冒頭のベースの凄まじい迫力は、CDでは決して聴く事が出来ない。


♪ 雨の湖畔 (昭和24年10月/眞木不二夫/C 772 B、東京レコード 692B/清水みのる・詩、倉若晴生・曲、編/裏面=東京ウチキ娘(菊池章子/テイチク・東京共)

眞木の叙情的な声質を十二分に生かした素晴らしい作品。この頃の歌謡ショーのパンフには、この「雨の湖畔」がデビュー曲と書かれている。


♪ さよなら東京港 (昭和24年11月/眞木不二夫/C 785 A/松田昇三・詩、鈴木哲夫・曲/裏面=君戀しさに(柳田一夫)

 眞木の「マドロス物」第一弾。前年の岡春夫「憧れのハワイ航路」大ヒットで類似作品が次々に作られ、田端義夫、曾根史郎らが得意とした。眞木の歌唱は全二者に比べ、やや真面目な感がしないでもない。なお裏面で「君戀しさに」というテイチク色一杯の素敵なバラードを、柳田一夫という歌手(新人?)が歌っている。しかしこれが今一つで、「もし眞木が歌っていたら・・・」と残念に思うことしきりであった。

♪ 玄海夜曲 (昭和25年2月/眞木不二夫/C 821 B or C 3020 B (3月再発)/新東寶映画「玄界灘の狼」主題歌/大高ひさを・詩、大久保健二郎・曲、編/裏面=玄界灘の狼(田端義夫)
 眞木戦後初の映画主題歌。

あつい涙 (昭和25年2月/眞木不二夫/C 822 B/大映映画「笑う地球に朝が来る」主題歌/大高ひさを・詩、大久保健二郎・曲、編)
 

♪ パラダイス東京 (昭和25年2月/眞木不二夫/C 826 B or C 3054 B (6月再発)、CD=TFC- 22005) 北村昇・詩、福島正二・曲、山田榮一・編/裏面=憧れの住町(菅原都々子/826、3054 共)
 眞木の「東京物」第一弾。A面の菅原の「憧れの住町」(オリジナル表記)のヒットにより、B面の眞木の名も広く知られる事となった。明るく伸びやかな歌声は、多くのファンに受け入れられた。

♪ 東京暮色 (昭和25年3月/眞木不二夫/C 861 B、東京レコード 778 A/萩原四朗・詩、鈴木哲夫・曲、編/裏面=東京ローマンス(菅原都々子/テイチク・東京共)
 眞木の「東京物」第二弾。テイチクは「都会的洗練さ」を眞木のイメージとしてPRしていたようで、岩手県釜石市出身にも拘わらず、この頃のプロフィールには「東京人形町生まれ」と記されている。(諸説あり)

♪ 愛の舗道(昭和25年3月/眞木不二夫 w.三原純子/C 3004 B/東京レコード776 B/大映映画「妻も戀す」主題歌/清水みのる・詩、鈴木哲夫・曲、編/裏面=妻も戀す(三原純子/テイチク・東京共)

 眞木不二夫のテイチクでの初デュエットは、ベテラン・楠木繁夫の妻君・三原純子との映画主題歌であった。(大映映画「妻も戀す」昭和25年3月封切/主演=水戸光子、龍崎一郎) 当時は、戦前からのベテラン俳優がメロドラマの主演をつとめることが多かった。
東京レコードはノイズの少ない良い音だが、冒頭が一瞬欠けているのが残念。恐らくダビングミスだろう。
 ところでこの曲での眞木の歌唱だが、いつもの眞木と違うのでは?、と不思議に思っていたが、テイチクの大先輩で三原の夫である楠木繁夫の歌を聴き、眞木が楠木の歌唱法を取り入れようとしたのではないか、と思うに至った。諸兄のご意見を乞う。


楠木繁夫 (右) と映画を観る眞木不二夫 (左)。テイチクの大先輩と共に写る貴重なスナップ。映画の一シーンであろうか。


♪ 泣くな片妻
(昭和25年4月/眞木不二夫/C 820 or C 3030 A (再発)、LP= SL-103〜7、CD=TFC- 22005、TECA 20172/板倉文雄・詩、平川浪龍・曲、長津義司・編/裏面=なつかしの晩香玉(820/水戸良子)、燕の來る頃(3030/水戸良子)

♪ 別れ湯の香
(昭和25年4月/眞木不二夫/C 3031 B、CD=TFC- 22005/森川幸吉・詩、長津義司・曲、編/裏面=なつかしの晩香玉(水戸良子)
 近江俊郎「湯の町エレジー」(昭和23年) の大ヒットに刺激され、多くの「湯の町」歌謡が作られた。眞木も複数の曲を歌っている。

♪ 東京地図 (昭和25年6月/眞木不二夫 w.菅原都々子/C 3052 B、東京レコード 833/大同正・詩、鈴木哲夫・曲、編/裏面=湖畔月夜(田端義夫/3052、833共)
 
 眞木の「東京物」第三弾。のちに「母子物」で幾度か共演する菅原との初デュエット曲。


わかれ岬 (昭和25年6月/眞木不二夫/C 3053 A、東京レコード878、CD=TECA 20172/宮崎武輝・詩、八富靜生・曲、倉若晴生・編/裏面=マニラの夜(菅原都々子/3053、878共)

 眞木の「岬物」第一弾。2番「夢も情(なさけ)も波しぶき・・・の「なさけ」が「なさげ」と濁音に聞こえるのは、高校時代まで岩手県釜石市で育った眞木に東北訛りが残っていることを伺わせる。(SNSからの情報です)

ブル−東京 (昭和25年7月/眞木不二夫/C 3066 A/清水みのる・詩、利根一郎・曲) 裏面=美しき月の夜に(水戸良子)

 眞木の「東京物」第四弾。のちに曾根史郎が「東京ムード」というタイトルで再録音している。
2021年8月、ようやく眞木のオリジナル盤を聴く事が出来た。曲の開始は半年前の「パラダイス東京」と全く同じで驚いた。眞木の歌唱は、聴き慣れた曾根とは全く違う。「こんなに爽やかな曲だったのか!」と改めて感心させられてしまったのだ。一例を挙げてみよう。中間の「だーれだろうー」と伸ばす箇所・・・曽根は思い入れたっぷりの歌い方だが、眞木は、ただただ純朴の極み! この部分を聴いただけで、眞木がますます大好きになった。


♪ 果てなき丘 (昭和25年7月/眞木不二夫/C 3068 B/清水みのる・詩、長津義司・曲) 裏面=夜風のルムバ(小唄勝太郎)

 初期の眞木のイメージを代表する、安心して楽しめる作品。しかしこれとよく似た曲が他にもあったのでは?
この頃良く使われた眞木のこのポートレートが、筆者は最も好きだ。

♪ ピエロ悲しや (昭和25年9月/眞木不二夫/C 3081 A/矢野亮・詩、利根一郎・曲) 裏面=あと一分でお別れネ(水戸良子)

 旅巡業のジンタと共に移ろい暮すピエロ・・・4年後の「さすらいの旅女形」にも共通する、何とも切ない世界。

♪ 男の十字路 (昭和25年9月/眞木不二夫/C 3087 A、東京レコード T-943 A/板倉文雄・詩、平川浪竜・曲、大久保徳二郎・編/裏面=ドンドコぶし/テイチク・東京共))

 男生命(いのち)の何ちゃら・・・という暑苦しい世界も、眞木が歌うと安心して聴いていられる。


ドンドコぶし (昭和25年9月/眞木不二夫/C 3087 B、東京レコード T-943 B/板倉文雄・詩、平川浪竜・曲、大久保徳二郎・編/裏面=男の十字路/テイチク・東京共)
 曲の出だしから「酒場へ行く道」(昭和29年6月/C 3643 A) に雰囲気がソックリ。作曲者は違う(後者は長津義司)が、何故?と、考えさせられてしまった。

渡り鳥 (昭和25年9月/眞木不二夫 w.菅原都々子/C 3090 B、東京レコード 989/香落瀧夫・詩、倉若晴生・曲、編/裏面=ロマンス航路(田端義夫/3090、989共)
 菅原とのデュエット第二弾。

♪ 高原の羊飼い(昭和25年10月/眞木不二夫/C 3093 B、CD=TFC- 22005/島田磐也・詩、長津義司・曲、編/裏面=さすらい乙女(菅原都々子)

♪ 霧の港 (昭和25年12月/眞木不二夫/C 3111 A、LP= SL-103〜7、CD=TFC- 22005、TECA 20172/板倉文雄・詩、平川浪竜・曲、バッキー白片・編/裏面=散りゆく花(菅原都々子)
 眞木の「マドロス物」第二弾で、ハワイアンの巨匠・バッキー白片との初顔合わせ曲。この「霧の港」は眞木の主要レパートリーになった。

♪ スキー青春 (昭和26年1月/眞木不二夫/C 3121 B、CD=TFC- 22005/島田磐也・詩、長津義司・曲、編)/裏面=懐かしのワルツ(菅原都々子)
 眞木にぴったりの明朗闊達な作品だが、オリジナルのSPではなぜか全曲を通じてピッチの不安定さが目立つ。随所でキーが徐々に上がって行く感がするのだ。特に後奏部では、半音近く上がってしまう。恐らく当時の録音機器の不調によるものと思われるが、2020年8月リリースのCDでは、こうした不都合がかなり改善されている。

♪ 長崎の娘さん (昭和26年1月/眞木不二夫/C 3122 A/大高ひさを・詩、倉若晴生・曲、編/裏面=月の慶州(水戸良子)

♪ 泪の雛げし (昭和26年1月/眞木不二夫/C 3142 B/加藤弓彦・詩、八富靜生・曲、倉若晴生・編/裏面=湯の町情話(菊池章子、壽々木米若)

 やや抑え目の曲調ながら、眞木の美声を遺憾な楽しめる佳作。


♪ 露の信濃路 (昭和26年?/眞木不二夫/C 3151 B/島田磐也・詩、長津義司・曲、編/裏面=眞晝の月 (菅原都々子)


 オークションサイトで入手した大量セットの中に、何と眞木の未聴レコードが紛れ込んでいました!! 世の中こんな嬉しい偶然もあるんですね。
曲は島田・長津コンビによる典型的な眞木歌謡曲。いつもながらの慣れ親しんだサウンドが嬉しい。ここでの眞木はいくぶん抑え気味ながら、安定した抒情を聴かせてくれる。それにしてもベースが上手い!! リズム感・音色とも申し分ない。この素晴らしいサウンドはCDでは絶対に聴けません。



♪ 母月夜の唄 (昭和26年2月/眞木不二夫 w.菅原都々子/C 3160 A、LP= SL-103〜7、CD=TFC- 22007/大映映画「母月夜」主題歌/大高ひさを・詩、長津義司・曲、編/裏面=黒い瞳(白鳥みづえ)
 大好評を得た大映映画「母子シリーズ」主題歌で、菅原との「母子物」第一弾。菅原とはこの後「母千鳥の唄」「母人形の唄」でも共演しており、いずれも素晴らしい。眞木は数多くの歌手とデュエットしているが、最も相性が良かったのは菅原だったのではないか。なお本作と「母千鳥の唄」は、今も菅原の全曲集CDに収録されている。

♪ みどりの丘越えて (昭和26年4月/眞木不二夫/C 3164 A/清水みのる・詩、倉若晴生・曲、編/裏面= 霧降る港(三原純子)

♪ 東京八景 (昭和26年3月/眞木不二夫 w.曙ゆり、小月冴子/C 3175 B/松竹歌劇團第二十回「東京踊り」主題歌/大高ひさを・詩、倉若晴生・曲、編)/裏面=東京さくら音頭(曙ゆり、小月冴子、村澤良夫)

眞木の「東京物」第五弾。昭和20年代の東京の風景が目前に浮かんで来るよう。 SKDのスターだった曙・小月の寸劇も楽しい。二人の映像は映画でも見る事ができる。



♪ 母千鳥の唄 (昭和26年4月/眞木不二夫 w.菅原都々子/C 3182 B、LP= SL-103〜7、CD=TFC- 22007/大映映画「母千鳥」主題歌/大高ひさを・詩、長津義司・曲、編/裏面=小夜ちどり(小笠原美都子) 
 菅原との「母子物」第二弾。哀愁を秘めた独自の世界は、他に得難いもの。

♪ 片瀬夜曲 (昭和26年5月/眞木富二夫/C 3184 A、CD=TFC- 22005、TECA 20172/大映映画「江の島悲歌」主題歌/大高ひさを・詩、倉若晴生・曲、編)/裏面=江ノ島エレジー(菅原都々子)

 ゆったりしたバラードで、倉若の会心作。眞木の主要レパートリーとなった。

♪緑の果てに手を振つて (昭和26年5月/眞木不二夫/C 3186 A/大映映画「緑の果てに手を振る天使」主題歌/清水みのる・詩、田村しげる・曲、編/裏面=手を振る天使(富田美至代)




♪ 湯の町月夜 (昭和26年6月/眞木不二夫/C 3193 A/島田磐也・詩、長津義司・曲、編/裏面=湯の町だより(小笠原美都子)

♪ 流転草紙 (昭和26年6月/眞木不二夫/C 3197 B/清水みのる・詩、大久保徳二郎・曲、編/舞踊歌謡)
 「片瀬夜曲」と同じAndanteのテンポは、真木の美声を味わうにはピッタリ。曲想の展開も、作曲者は異なるが「片瀬」に何となく似ている。

♪ 情炎の波止場 (昭和26年6月/眞木不二夫/C 3211 A/大映映画「情炎の波止場」主題歌/清水みのる・詩、平川浪竜・曲、長津義司・編/裏面=港小夜曲(菊池章子)

♪ 城ヶ島の灯 (昭和26年6月/眞木不二夫/C 3212 A/新東寶映画「無宿猫(ドラネコ)」主題歌/清水みのる・詩、倉若晴生・曲、編)/裏面=佐千子の唄(菅原都々子)

♪ 佐渡はふるさと(昭和26年7月/眞木不二夫/C 3213 A/清水みのる・詩、倉若晴生・曲、編/裏面=おけさキャラバン(菅原都々子)

 「佐渡おけさ」を巧みに取り入れた倉若の編曲は秀逸。




♪ しぐれ笠 (昭和26年7月/眞木不二夫/C 3216 A/大關五郎・詩、陸奥明・曲、和島十郎・編/舞踊歌謡/裏面=恋の二日月 (小笠原美都子)

舞踊歌謡ということで全体に落ち着いた曲調。その中にあって、一つ一つの歌詞に「思いと意味」を込める眞木の歌唱は素晴らしい。
泣きたい胸が涙こらえて」(一番)、「何の嘆きが嘆くぢやないが」(三番)など、サビに込めた眞木の思いをじっくりと味わいたい。


♪ 湯の町しぐれ (昭和26年7月/眞木不二夫 w.小唄勝太郎/C 3222 A、東京レコード=T 1200 A/新映画社「湯の町情話」主題歌/萩原四郎・詩、倉若晴生・曲、編/裏面=伊豆の山鳩(菊池章子/テイチク・東京共)

 真木のデュエット物の中でも、上位に挙げたいレコード。公私共々の恩人・勝太郎姐さんの「うた」は、例えようがないほど素晴らしい。2021年に東京レコード盤を聴き、改めてその感を強くした。かつて徳山たまきがその随筆の中で、「勝太郎は何を歌ってもコブシになってしまう」と書いていたが、その妙味をこの曲でも存分に聴き取る事が出来る。全盛期の声量は無いが、それを補う心からの「うた」がここにはあるのだ。歌は何よりもまず「味」なのだということを教えてくれる、勝太郎さんの「こぶし」の魅力! それが真木の西洋的歌唱と絶妙なハーモニーを見せる。

♪ 大阪シャンソン (昭和26年7月/眞木不二夫/C 3235 A、東京レコード T 1206 B/清水みのる・詩、倉若晴生・曲、編/裏面=浪花八景 (菊池章子)

♪ 名残りしぶき (昭和26年8月/眞木不二夫/C 3236 A/清水みのる・詩、倉若晴生・曲、編)

♪ 明石哀歌 (昭和26年8月/眞木不二夫 /C 3238 B/東京レコード=T 1254 B/島田磐也・詩、大久保徳二郎・曲、編/裏面=須磨の仇波(菊池章子/東京R)

♪ 再見上海 (昭和26年11月/眞木不二夫/C 3250 A 、CD=TFC- 22005、TECA 20172/大高ひさを・詩/吉田矢健治・曲・編/裏面=廣東エレジー(菅原都々子)
 眞木の「大陸もの」第一弾で、俊英・吉田矢健治との初共演曲。のちの「ダコタえの馬車」共々、エキゾチックな曲作りを得意とする吉田矢の才能が、この作品では見事に現れている。支那音楽の音階を巧みに取り入れた旋律は戦前世代の共感を呼び、眞木の主要レパートリーとなった。

♪ 氣まぐれ浪人 (昭和26年10月/眞木不二夫/C 3255 A/大映映画「逢魔ケ辻の決闘」主題歌/清水みのる・詩、倉若晴生・曲、編/裏面=母戀手鞠唄(白鳥みづえ)

 「侍ニッポン」とそっくりのリズミカルなテンポに、思わず苦笑。

♪ 鴛鴦ぶし(新吉の唄) (昭和26年10月/眞木不二夫 w.かつら五郎/C 3256 B/島田磐也・詩、長津義司・曲、編/松竹映画・鞍馬天狗・決定版「鞍馬の火祭」主題歌)/裏面=鞍馬の火祭(かつら五郎)

少年歌手で「鞍馬天狗」の杉作役もつとめた「かつら五郎」との唯一の共演曲。眞木にはこの曲よりも、裏面でかつらが歌っている「鞍馬の火祭」の方を歌って欲しかった・・・



母人形の唄 (昭和26年10月/眞木不二夫 w.菅原都々子/C 3265 A/大映映画「母人形」主題歌/大高ひさを・詩、長津義司・曲、編)/裏面=加茂の夕月
菅原との「母子物」第三弾。

♪ 加茂の夕月 (昭和26年10月/大映映画「母人形」主題歌/眞木不二夫/C 3265 B/大映映画「母人形」主題歌/荻原四朗・詩、平川浪竜・曲、宮脇春夫・編)/裏面=母人形の唄


♪ 夕陽の鳥 (昭和26年10月/眞木不二夫/C 3267 B、CD=TFC- 22005/新映制作・大映配給映画「紅涙草」主題歌/萩原四朗・詩、長津義司・曲、編)/裏面=紅涙草(菅原都々子)

♪ 泪の落合橋 (昭和27年1月/眞木不二夫/C 3251 B、東京レコード (眞木富士夫 T 1391 B/伏見栄作・詩、倉若晴生・曲、編/舞踊歌謡/裏面=雨の隅田川(小唄勝太郎/東R)

 三味線が印象的な純日本調流行歌で、戦前の東海林太郎を思い起させる。眞木はいつもながらの美声で、こうした曲調にも新風を吹込んでいる。なお「眞木富士夫」表記をしているのは、筆者の知る限りではこの東京レコード盤のみ。

♪ 母と呼ばれて (昭和27年1月/眞木不二夫/C 3282 B/大映映画「母子船」主題歌/清水みのる・詩、吉田矢健治・曲、編)/裏面=母子船唄(菊池章子)
 それまで「母子物」を手がけて来た大高・長津コンビの雰囲気を、吉田矢はよく引き継いでいる。

♪ 涙の夜船 (昭和27年2月/眞木不二夫/C 3296 A/板倉文雄・詩、倉若晴生・曲、編)

♪ 流れる母 (昭和27年2月/眞木富二夫/C 3303 A、東京レコード1401/香落武輝・詩、吉田矢健治・曲、編)/大映映画「呼子星」主題歌/裏面=呼子星(菅原都々子/3303、1401共)

♪ 「憧れのパラダイス」(昭和27年4月/眞木富二夫/C 3307A/島田磐也・詩、福島正二・曲、編) /裏面=高原のあこがれ(前島節子)

 タイトルの安易さからやや危惧したが、なかなかの作品。ここでの眞木は、衒いのない伸び伸びとした美声を存分に聴かせてくれる。



櫻ラプソディ (昭和27年4月/眞木富二夫/C 3316 A/島田磐也・詩、大久保徳二郎・曲、編) /裏面=チェリータンゴ(菊池章子)

 「玄海夜曲」の大久保徳二郎による「櫻ラプソディ」。曲は短調で始まるが、中間部で長調に転調する際の鮮やかな音程の跳躍は、まことに見事。眞木の比類なき歌唱力を堪能できる佳曲。


夢の流れに (昭和27年5月/眞木富二夫/C 3319 A/高木勉・詩、平川浪竜・曲、編) 裏面=夢を呼ぶ街(菊地章子)

 長調の落ち着いた雰囲気の作品だが、ややインパクトに欠ける。

♪ 泪の夜汽車 (昭和27年6月/眞木富二夫/C 3330 A、LP= SL-103〜7、CD=TFC- 22005、TECA 20172 他オムニバス盤多数/板倉文夫・詩/平川浪竜・曲、長津義司・編)/裏面=ダコタえの馬車

 眞木の「列車もの」第一弾は彼の最大のヒット曲となった。(上の写真のように現在、複数のレーベルが確認されている)
今も歌い継がれている唯一の作品で、音楽のバランスやメロデイの展開、編曲も秀逸。 眞木の伸びやかな歌声にただただ嘆息!! 昭和20年代の夜行列車(SL)の情景が目前に浮かぶよう。この作品に巡り合えた事で、真木不二夫の名は辛うじて現代に伝えられたのだ。


ダコタえの馬車 (昭和27年6月/眞木富二夫/C 3330 B/太宰衛・詩、吉田矢健治・曲、編)/裏面=泪の夜汽車
 眞木の「馬車もの」第一弾。従来の真木のレパートリーには見られないハイカラな曲調ゆえか、ファンも多い作品。

君去りぬ (昭和27年5月/眞木富二夫/C 3336 B/新映「磯節情話」主題歌/香落滝夫・詩、吉田矢健治・曲、編/裏面=磯節情話(小唄勝太郎))

 スロータンゴの曲調。ヴァイオリンとアコーディオンに乗って唄われるのは、何と古き旅役者の悲恋・・・吉田矢のセンスが光る。間奏にヴィヴラフォンを用いているのは、「憧れのハワイ航路」の影響だろうか。
「潮来」「あやめ」「出船」「ヨシキリ」など、ほかの作品でも聴いたような単語が続き、真木の長く伸ばされるハイ・トーンが美しい。これは、なかなかの作品だ。

♪ 恋の十字路 (昭和27年7月/眞木富二夫/C 3349 B/清水みのる・詩、倉若晴生・曲、編) /裏面=このままで(菅原都々子)

♪ アカシアの並木路 (昭和27年7月/眞木富二夫/C 3362 B/大高ひさを・詩、福島正二・曲、編/裏面=青い小窓の喫茶店(村澤可夫)

 2023年1月、夢にまで見た「アカシアの並木路」を、ついに聴く事ができた! 譜面からスローなバラードを想像していたが、ジャジーでややハイ・テンポな作品であった。眞木の歌声は美しく、曲も時計台の鐘を交えるなどの工夫が面白い。
裏の村澤の「青い小窓の喫茶店」がA面で、ヴァイオリンの美しいソロを交えたタンゴ調だ。ひょっとしたら、こちらの方が眞木には向いていたのでは? と、ふと思ってしまった。両曲とも昭和20年代後半の空気を、ひしひしと肌身に感じさせてくれる。

ギター流して (昭和27年8月/眞木富二夫/C 3364 A/島田磐也・詩、福島正二・曲、編/裏面=ぢゃがたらエレジー(平野愛子)
 眞木の「ギターもの」第1弾。このシリーズは皆味わいあるバラードで、眞木の真の魅力を知るために決して見逃す事の出来ないレパートリーだ。

♪ 浅草スーベニア(昭和27年7月/C 3370 B/眞木富二夫、台詞=曙ゆり・小月冴子・南條名美/裏面=夏の夢(曙ゆり、南條名美)

 眞木の「東京物」第六弾。「東京八景」で共演したSKDの曙・小月に南條を加えた台詞入りだが、内容はややしっとりしたものになっている。

♪ 君住む島 (昭和27年8月/眞木富二夫/C 3377 B、CD=TFC- 22005、TECA 20172/大映映画「佐渡ヶ島悲歌」主題歌/萩原四朗・詩、福島正二・曲、編)/裏面=佐渡ヶ島悲歌(菅原都々子)

たそがれ岬 (昭和27年10月/眞木富二夫/C 3380 A/宮崎武輝・詩、倉若晴生・曲、編)/裏面=嘆きの湖(菅原都々子)

 眞木の「岬物」第二弾。



吹雪を衝いて (昭和27年12月/真木富二夫/C 3392A/島田磐也・詩、福島正二・曲、編)/裏面=銀座物語
 真木の「国境もの」第一弾。

銀座物語 (昭和27年12月/真木富二夫/C 3392 B/大高ひさを・詩、平川浪竜・曲、宮脇春夫・編)/裏面=吹雪を衝いて
 眞木の「東京物」第六弾。これは隠れた名曲だ。「青い背広で」や「銀座の柳」などのフレーズが断片的に現れるなど、洒落の効いた宮脇の編曲は秀逸 !

南海悲歌 (昭和27年12月/明神礁第五海洋丸遭難/眞木富ニ夫 w.原田美恵子、石津房子、竹内昭子/C 3400 B、LP= SL-103〜7、CD=TFC- 22005/大高ひさを・詩、倉若晴生・曲、編)/裏面=恨みは深し明神礁(田端義夫)
 昭和27年9月17日、伊豆沖で突如噴火した海底火山・明神礁を探索するため出航した第五海洋丸が噴火に巻き込まれ、乗員31名全員が殉職した。この大惨事を悼んで作られた作品である。当時はこのような事件をテーマにした歌が、よく作られた。

面影いづこ (昭和28年1月/真木富二夫/C 3407 A/伏見栄作・詩、倉若晴生・曲、編) 裏面=泣いたとて(三原順子)
 同じテイチクの白根一男に「面影いずこ」(昭和31年)という作品があるが、全く別作品。曲は、ギターのしっとりとしたイントロで始まる。過ぎし日の淡い初恋を偲ぶ内容なのだが、メロディーラインが単調で曲全体のインパクトもやや乏しいのが惜しまれる。

 嘆きの銀嶺 (昭和28年2月/真木富二夫/C 3429 A/島田磐也・詩、長津義司・曲、編) 裏面=港のブルース(菊池章子)

 銀嶺に来て、遭難死した友を偲ぶという内容。ややアップテンポの典型的なテイチク・サウンドで、眞木の高音が美しい。
 

トラジの故郷 (昭和28年2月/眞木富二夫/C 3430 B/板倉文雄・詩、久慈ひろし・曲、福島正二・編)/裏面=アリラン哀歌(菅原都々子)
 眞木の「大陸もの」第二弾。眞木のベスト3に入れたい名曲。戦前に朝鮮で生を受け帰国した日本人の、故郷を偲ぶ思いを表しているのか。間奏の「アリラン」は、涙なくしては聴けない。

♪ 男三度笠(昭和28年3月/眞木富二夫/C 3443 A/島田磐也・詩、長津義司・曲、編)/裏面=鳥追道中(菊池章子)
 真木が唄った浪人物は「気まぐれ浪人」とこの作品のみ。なかなかユニークな曲想だ。


♪ 金色夜叉(昭和28年3月/眞木富二夫 w.平野愛子/C 3446 A、LP= SL-103〜7/宮島郁芳・詩、曲、長津義司・編/裏面=どんどん節 (小唄勝太郎)/想い出の艶歌集(構成)神長瞭月

 「想い出の艶歌集」の一枚。明治・大正期の懐メロをリバイバルしたこのシリーズでは、ほかに「籠の鳥」(村澤可夫・鹿島友起子)、「ストトン節」(鈴村一郎・原田美惠子/ 以上C-3444)などがリリースされたが、テイチクがオンラインで公開している「SP盤総目録」にはなぜか記載されていない。
眞木が懐メロのスタンダード・ナンバーを歌った、数少ない貴重な一曲だ。



♪ あゝ青春 (昭和28年4月/眞木富二夫/C 3448 B/島田磐也・詩、長津義司・曲、編) 裏面=加茂川悲歌(菊地章子)

 叙情的なバラードは眞木の独壇場だ。この曲は島田・長津コンビの作品としては並の出来なのだが、眞木の歌唱がそれを見事に補っている。「呼べど再び巡り来らぬ青春をひたすら偲び続ける」眞木の歌唱は、切々と聴く者の胸に迫る。

人生サーカス (昭和28年4月/眞木富二夫/C 3449 A、CD=TFC- 22005/島田磐也・詩、平川浪竜・曲、長津義司・編)

腰のバンドに縋りつき (昭和28年4月/眞木富二夫 w.前島節子/C 3450 B、東京レコード1432/大高ひさを・詩、倉若晴生・曲、編)/裏面=ルンペン行進曲(竹山逸郎/テイチク)、高原旅情(竹山逸郎/東京R)
 これも懐メロのスタンダード・ナンバー。

東京カーニバル (昭和28年4月/眞木富二夫/C 3459 B/中川啓兒・詩、山口進・曲、福島正二・編)/裏面=春は東京踊りから(曙ゆり、小月冴子、磯野千鳥、草笛光子)

 眞木の「東京物」第七弾。この「東京カーニバル」も浮き浮きするような曲調が魅力。


♪ 春は逝く(昭和28年4月/眞木富二夫/C 3461 B、CD=TFC- 22005/萩原四朗・詩、平川浪竜・曲、福島正二・編)大映映画「悲恋椿」主題歌/裏面=悲恋椿(菅原都々子)




♪ 泪の連絡船(昭和28年6月/眞木富二夫/C 3467 A、LP= SL-103〜7、CD=TFC- 22005、TECA 20172/大高ひさを・詩、平川浪竜・曲、長津義司・編)/裏面=水平線の彼方に(白根一男)
 眞木の「マドロス物」第三弾。

♪ 十五夜ぶし(昭和28年7月/眞木富二夫 w.小唄勝太郎/C 3493 B/清水みのる・詩、倉若春生・曲、編) 裏面= 富士のお山で(美ち奴)

♪ 北京歸りの銀子(昭和28年8月/眞木富二夫/C 3498 A/萩原四朗・詩、平川浪竜・曲、長津義司・編) 裏面=想い出のハルピン

 眞木の「大陸もの」第三弾。前年の津村謙「上海帰りのリル」のヒットを受けて作られたのだろう。タンゴの曲調もそっくりだが、眞木の名唱により当時の情景が眼前に蘇る。類似作のレベルを越えた、素晴らしい作品である。
歌詞カードに作詞者によると思われる「試聴の栞」が掲載されているので、以下に転載する。


「雨の舞鶴。中共地区から引揚げて来た人々の中に、はつと胸をつく見覚えの女の姿。むかし北京の一夜を、甘美な青春の吐息にぬれあつたやさしいなつかしい銀子にちがいない。彼女はどんな感慨を持つて、変り果てた敗戦の日本に還つて来たのだろう。誰一人出迎える人もなかつた。慰めてやりたい。昔の思い出を語りたい。然し、今の自分には妻子があり家庭の主人であることの自省で、呼びかけたい勇気を挫いて仕舞う。昔の夢だ。すぎた夢だ。左様ならも胸の中で、寂しく夜汽車にゆられて去る銀子のうしろ姿を見送る男の複雑な気持を歌つたものである。」


想い出のハルピン (昭和28年8月/眞木不二夫/C 3498 B、CD=TFC- 22005/清水みのる・詩、長津義司・曲、編/裏面=北京帰りの銀子)
 眞木の「大陸もの」第四弾。戦前世代の郷愁もあってか、当時はこのような「大陸もの」と言える作品が多く作られた。この曲ではバラライカを用いて、ロシア民謡を巧みに取り入れている。

夜更の急行列車 (昭和28年9月/眞木富二夫/C 3507 A/板倉文雄・詩、福島正二・曲、編)/裏面=旅ゆく小鳩(三鳩ひとみ)
 眞木の「列車もの」第二弾。

悲しき故郷 (昭和28年10月/真木富二夫/C 3523 B/板倉文雄・詩、平川浪竜・曲、宮脇春夫・編)/裏面=博多エレジー(菅原都々子)

♪ 街角の鈴懸に (昭和28年10月/真木富二夫/C 3524 A/北譲二・詩、石毛長次郎・曲、米戸勉・編)

おもいで岬(昭和28年11月/真木富二夫/C 3533 A/清水みのる・詩、倉若晴生・曲、編)/裏面=泪のさすらい馬車
 眞木の「岬物」第三弾。

泪のさすらひ馬車(昭和28年11月/真木富二夫/C 3533 B or 20004 A/板倉文雄・詩、平川浪竜・曲、長津義司・編)/裏面=おもいで岬(3533)、哀愁橋 (龍野美智子/20004 B)

 眞木の「馬車もの」第二弾。


♪ おしどり新内 (昭和29年1月/真木富二夫 w.美ち奴/C 3568 B/雨音しげる・詩、福島正二・曲、編/裏面=流轉笠(今村隆)

 新内流しをする夫婦の情愛が滲み出るような三味線の響き・・・
「貴方唄えば私が弾いて・・・」美ち奴の切々とした歌声から、どうしても眞木との私生活に思いを馳せてしまう。
何とも切ない作品だ。


♪ 吹雪の国境 (昭和29年2月/真木富二夫/C 3574 B、CD=TFC- 22005、TECA 20172/島田磐也・詩、長津義司・曲、編)/裏面=四馬路の月(美ち奴)
眞木の「大陸もの」第五弾。東海林太郎「国境の町」を想起させる、エキゾチックな曲調を持った作品。

鳴門しぐれ (昭和29年2月/真木富二夫/C 3592 B/藤田まさと・詩、長津義司・曲、編/裏面=お七ぼんぼり(菅原都々子)

山の呼ぶ声母の声(昭和29年3月/真木富二夫/C 3593 B/大映映画「四人の母」主題歌/3593/大高ひさを・詩、福島正二・曲、編)/裏面=四人の母(菊池章子)

 真木独特の底抜けな明るさが魅力。



♪ 明月槍おどり
(昭和29年3月/真木富二夫/C 3604 A/萩原四朗・詩、平川浪竜・曲、長津義司・編/裏面=恋ひと夜(美ち奴)

 伝統的な純日本調歌謡曲で、武家の槍持ちの心情を描いており、三味線の音色が美しい。
ただ詩の内容・曲調とも今ひとつで、真木もソツなくこなしてはいるものの、歌にいつもの声の響き・乗りが乏しい。音程が跳躍する箇所でフラットになる癖がこの曲では顕著で、二番では声のコントロールが苦しそうなのも気になる。曲に思いを込めにくかったのか、それとも体調が今一つだったのだろうか。


♪ 波止場旅情 (昭和29年/真木富二夫/C 3612 B/島田磐也・詩、平川浪竜・曲、福島正二・編) 裏面=上海エレジー(菅原都々子)
眞木の「マドロス物」第四弾。

青春のふるさと (昭和29年4月/真木富二夫/C 3631 B/藤田まさと・詩、長津義司・曲・編/裏面=すみれの花は恋の花(菅原都々子)




悲戀岬 (昭和29年5月/真木富二夫/C 3633 A/清水みのる・詩、倉若晴生・曲、編) /裏面=初恋の丘(原田美恵子)
 眞木の「岬物」第四弾。

♪ 芦ノ湖哀歌(昭和29年6月/真木富二夫/C 3639 A/萩原四朗・詩、倉若晴生・曲、編/裏面=嘆きの人妻(菊池章子)

 冒頭のコルネット・ヴァイオリンの哀愁を帯びた音色から、もうすでに倉若ワールド満開。真木の哀愁を帯びた歌声は、このような「哀歌物」にまさにピッタリ。


♪ 酒場へ行く道(昭和29年6月/真木富二夫/C 3643 A/島田磐也・詩、長津義司・曲、阿部武雄・編/裏面=グッドバイ東京(櫻町京子))


 真木では珍しいジャズ。若原一郎「おーい中村君」の先駆けとも言える内容。サラリーマンという呼称がまだ新鮮だった当時の世相が伺え、興味深い。


♪ さすらいの旅女形 (昭和29年7月/真木富二夫/C 3655 A/唐崎まさはる・詩、倉若晴生・曲、編)
 どさ回り劇団の色あせ破れた幟に、やつれた自らの姿を重ねる旅女形(おやま)・・・切なさ満点の内容は、深く心に残る。

潮來夜船 (昭和29年7月/真木富二夫/C 3657 B/藤田まさと・詩、倉若晴生・曲、編/裏面=伊那の馬子唄(淺野晴子)


 この曲は、もともと夭逝の名歌手・北廉太郎 (1920〜40) の持ち歌であった。




♪ あさ風の母 (昭和29年7月/真木富二夫/C 3659 B/大映映画「母時鳥」主題歌/萩原四朗・詩、福島正二・曲、編/裏面=母時鳥(菅原ツヅ子)

(大映映画「母時鳥」昭和29年 主演/三益愛子、南田洋子)




♪ 霧の出船 (昭和29年8月/真木富二夫/C 3667 B/松田昇三・詩、阿部武雄・曲、堀内ひろし・編/裏面=海峽夜船(白根一男)


 眞木の「マドロス物」第五弾。



♪ ギター長恨歌 (昭和29年9月/真木富二夫/C 3687 B/大高ひさお・詩、小泉幸雄・曲、編/裏面=思いでの聖橋 (菊池章子)


 眞木の「ギターもの」第二弾。これまでの真木の作品には無かった雰囲気とメロディーラインを持つ、ユニークな作品。真木には珍しい「こぶし」を効かせたフレーズは、まことに効果的。 高音域 (G) はやや苦し気だが、「恨み」の気持をシッカリ込めた結果か? 


♪ 丘の上の白い校舎(昭和29年12月/真木不二夫、(台詞)南田洋子/C 3722 A、LP= SL-103〜7、CD=TFC- 22005、TECA 20172、マルフク(沖縄) OKI-1001/萩原四朗・詩、倉若晴生・曲、編)/裏面=夕陽の時計台(菊池章子)


 当時35歳の真木が高校を卒業する生徒の心情を歌う、「学園もの」のハシリとも言える曲。若き日の南田洋子のナレーションからは、タイムスリップしたような不思議な感情を覚える。なお白い校舎は真木の故郷・釜石市嬉石の白亜の校舎がモチーフになっているという情報もある。
画像は返還前の沖縄で発売されたEP。発売年月等詳細は不明だが、テイチクからライセンスを受け昭和30年代前半にリリースされたものと思われる。(裏面=真白き富士の嶺 (三条江梨子))



東京へ行こうよ(昭和30年1月/真木不二夫/C 3734 A、LP= SL-103〜7、CD=TFC- 22005、TECA 20172/大久保正弘・詩、平川浪竜・曲、長津義司・編)/裏面=あの人は馬車に乗って(楠木トシエ)


 ユーモラスな歌詞カードとジャケットに時代を感じさせられる。眞木の「東京物」第八弾は「涙の夜汽車」の平川浪竜・作曲による会心作で「ヒット間違いなし」と言われたが、「地方の青少年の家出を招きかねない内容」と当局に問題視され発売禁止となってしまった。
いつの時代も、若者の東京を憧れる気持は変わらない。


若き瞳 (昭和30年1月/真木不二夫 w.菊池章子/C 3750 B/大映映画「蛍の光」主題歌/萩原四朗・詩、大久保徳二郎・曲、編/裏面=蛍の光(菊池章子)


 大映映画「螢の光」(昭和30年1月公開/主演=若尾文子、菅原謙二) 若尾の何と美しいこと!!


♪ 夢もあらたに (昭和30年1月/真木不二夫/C 3752 B/NHK連續放送劇「青い孔雀」主題歌/岡田教和・詩、土橋啓二・曲、編/裏面=青い孔雀(菊池章子)

♪ みかえり岬 (昭和30年2月/真木不二夫/C 3756 A/田中千惠子・詩、倉若晴生・曲、編/裏面=峠の馬車(原田美恵子)
 眞木の「岬物」第五弾。

♪ 空が晴れたら(昭和30年3月/真木不二夫/C 3768 A、LP= SL-103〜7、CD=TFC- 22005、TECA 20172/若山かほる・詩、福島正二・曲、編)/裏面=君とはるばる來た町は



君とはるばる來た町は(昭和30年3月/真木不二夫/C 3768 B/萩原四朗・詩、倉若晴生・曲、編)/裏面=空が晴れたら

哀しき富士の白雪よ (昭和30年4月真木不二夫 w.菊池章子/大映映画「哀しき富士の白雪よ」主題歌/C 3783/藤田まさと・詩、大久保徳二郎・曲、編)/裏面= 仰げば尊し(菊池章子)

♪ バイバイシャンソン (昭和30年5月/真木不二夫/C 3789 A/雨音しげる・詩、上原賢六・曲、編) 裏面= 行ってらっしゃい元気でね(菊池章子)


 グッドバイ、キツスなど横文字を駆使した港物だが、作品としてはやや魅力に欠ける。


♪ 男の道 (昭和30年5月/真木不二夫/C 3802 B/大映映画「幽霊講道館」主題歌/萩原四朗・詩、平川浪竜・曲、宮脇春夫・編/裏面=風雪講道館(白根一男)


 古賀メロデーを想起させるギターのイントロに期待が膨らむが、ワルツ調の主部は平凡で残念。


湖畔の馬車 (真木不二夫/C 3807 B/清水みのる・詩、山下五郎・曲、編) /裏面=トラピストの鐘(菅原都々子)


 真木の「馬車もの」第三弾は隠れた名曲「湖畔の馬車」 軽快に走る馬車を表す打楽器郡が、皆緊張しているのが良く分かる。



別れの夜汽車 (昭和30年6月/真木不二夫/C 3809 A/浜名いさみ・詩、川岸章・曲、福島正二・編/裏面=恋の終列車(原田美惠子)

 眞木の「列車もの」第三弾。

二人で待とう (昭和30年5月/真木不二夫/C 3818 A/久保田リュウ・詩、平川浪竜・曲、長津義司・編)/裏面=ロマンチック東京




ロマンチック東京 (昭和30年5月/真木不二夫 w.原田美恵子/C 3818 B/大高ひさを・詩、上原賢六・曲、宮脇春夫・編)/裏面=二人で待とう
 眞木の「東京物」第九弾。


慕情岬 (昭和30年7月/真木不二夫/C 3822 A、CD=TECA 20172/田中千恵子・詩、倉若晴生・曲/裏面=君が心のみづうみに(白根一男)


 眞木の「岬物」第六弾。


丘は楽しや (昭和30年8月/真木不二夫/C 3836 B/宮崎武雄・詩、福島正二・曲、編) 裏面= 愛の十字路(菊池章子、高橋浩二)


 明朗闊達な作品は真木の独壇場だが、この曲は彼の特質を最大限発揮した作品だ。


オリーブの花咲く小島 (昭和30年8月/真木不二夫/C 3838 A/弘内正弥・詩、清水みのる・補作、福島正二・曲、編)/裏面=パゴダの見える丘(竜野美智子)


 瀬戸内海の小豆島を歌った作品。明るく軽快な二拍子の曲だが、詩(公募作か?)・曲とも特徴に欠け心に残らない。
真木の歌声もいつもの乗りに乏しく、ややニヤケ気味にさえ聞こえる。真木にはむしろ裏面の「パコダの見える丘」を歌って欲しかった。
この「イヨマンテの夜」を連想させるエキゾチックな作品は、竜野にはやや荷が重すぎた。真木ならどんな名唱を聴かせてくれたろうと思うと、ただただ残念。

港裏町 (昭和30年9月/真木不二夫/C 3855 B/大高ひさを・詩、久我山明・曲、編) 裏面=影法師の女(菊地章子)

 
 眞木の「マドロス物」第六弾。ハワイアン・ギターの前奏のあとに現れるメロディーは、春日八郎あたりが歌ったらピッタリなのでは、と思わせる。
真木の美声は、このような影のある曲想には清潔すぎる感がしないでもない。


妻をめとらば (昭和30年9月/真木不二夫/C 3857 A/與謝野寛・詩、山田栄一・曲、編/裏面=乙女の恋は清らかに(荒川文子、竜野美智子、櫻町京子)


 真木がスタンダードナンバーを歌った、数少ない一曲。バックの女声コーラスの拙さには絶句・・・


♪ 今宵かぎりの港町 (昭和30年10月/真木不二夫/C 3868 A/大高ひさを・詩、久我山明・曲/裏面=諦められる恋ならば(原田美惠子)


本ページでこれまで未紹介だった作品で、大いなる期待をもって聴いた。しっとりと落ち着いた雰囲気だが曲・歌唱とも魅力に乏しく、今一つの出来であった。
音域が全体に低いためか真木の声に輝きがなく、メロディも単調で盛り上がりに欠ける。
裏面の原田美惠子が歌う「諦められる恋ならば」の方はテイチク色満点で長津義司のメロディが美しく、もしこちらを真木が歌っていたら、と思ってしまった。
柳田一夫「君戀しさに」、かつら五郎「鞍馬の火祭」、村澤可夫「青い小窓の喫茶店」、田端義夫「浜松夜曲」、竜野美智子「パコダの見える丘」など、真木のB面には何故か名作が多い。
これらを真木不二夫に歌わせなかったテイチク制作部の判断を、かえすがえすも残念に思う。


♪ 夢呼ぶ瞳 (昭和30年10月/真木不二夫/C 3873 B/清水みのる・詩、田村しげる・曲、編)

♪ ここが命の2・3 (昭和30年11月/真木不二夫/C 3878 A/MEG-CD MSCL-10406/関根潤三・詩、山田量男・曲)

 作詞者は名プロ野球選手・監督で実績を残した著名な人物。真木の美声をノイズ無しの幅広いダイナミック・レンジで聴けるMEG-CDシリーズは、ファンにとり本当に貴重だ。このシリーズからは他に「旅路の雨」「東京の裏窓」「美貌の園」の、計4曲がリリースされている。

ギター渡り鳥 (昭和30年12月/真木不二夫/C 3893 A/藤田まさと・詩、平川浪竜・曲、山田たかし・編/裏面=わかれ月夜)


 眞木の「ギターもの」第三弾。



わかれ月夜 (昭和30年12月/真木不二夫/C 3893 B/清水みのる・詩、久我山明・曲、編/裏面=ギター渡り鳥)


♪ 吹雪の夜汽車 (昭和30年12月/真木不二夫/C 3911 A/周東敬二・詩、長津義司・曲、編/裏面=雪降る山のホテル(櫻町京子)


 眞木の「列車もの」第四弾。ヒット曲「泪の夜汽車」の夢よ再びと作られたのだろう。かなり健闘しており真木の高音も美しいが、詩の描く世界がチグハグでメロデーも今ひとつなのが残念。

♪ 旅路の雨(昭和31年1月/真木不二夫/C 3925 A/MEG-CD MSCL-10413、CD=TFC- 22005/小島高志・詩、野崎真一・曲、長津義司・編)/裏面=面影いずこ(白根一男)


 2020.8にリリースされたCDはSP原盤を使っているためノイズがある。MEG-CD はノイズの全く無い素晴らしい音。テープ収録音源か?


♪ 並木の街に雨が降る (昭和31年3月/真木不二夫/C 3946 B/清水みのる・詩、野崎真一・曲、久我山明・編/裏面=星かげの湖(菊池章子)

♪ 美貌の園 (昭和31年3月/真木不二夫/C 3950 A/MEG-CD MSCL-10418/松竹映画「美貌の園」前後編主題歌/大高ひさを・詩、奥村一・曲/裏面=あの花もこの花も(竜野美智子、櫻町京子))
 MEG-CDはノイズの全く無い素晴らしい音。

 松竹映画「美貌の園」(昭和31年2月12日公開) ポスター (松竹株式会社HPより転載)
 主題歌 テイチクとあるが、真木不二夫の名前が無いのは残念・・・

♪ 初恋物語 (昭和31年5月/真木不二夫/C 3967 A/大塚道美・詩、宮脇春夫・曲、編)
 曲のアタマと間奏に、真木のナレーションが入る。歌でない真木の地声が聞けるのはこの曲だけだ。意外に歌とのギャップが少なく、真木の性格や人柄まで伝わってくるよう。当時37歳だった真木に「青春」を歌わせるには、このような回想の形にするしかなかったのだろう。

♪ 東京の裏窓 (昭和31年6月/真木不二夫/C 3995 A/MEG-CD MSCL-10431、CD=TFC- 22005/猪又良・詩、倉若晴生・曲、編)
 (真木不二夫・テイチク・ラスト・レコーディング)


 真木の「東京物」第十弾が、彼のテイチク・ラスト・レコーディングとなってしまった。MEG-CDはノイズのない素晴らしい音で、真木の美声を心ゆくまで楽しむ事ができる。


真木不二夫/ホームページ


真木不二夫/ディスコグラフィー

 ポリドール篇  依頼録音その他

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