俳句と短歌と詩 

     

早春    

 

02/03/01

「人間」と書くぐらいだから
人と人の間には距離が必要なのでしょう
近づけば逃げ
遠ざかると近づいてくるのは
気持のいい距離を取ろうとしているのです
けっしてあなたが疎ましいのではありません
でも、あまり近づかないで
わたしは自由に呼吸がしたいのです


01/03/31

桜咲き後ろ姿は満ち足りて全うすることの羨ましきかな

まっさらな四月のページ待ち遠し


01/03/26

この一年私は何をしていたろう目を覚ませば季節は過ぎぬ

春の風一夜限りの花散らす


01/03/22

私にはあなたの嘘は嘘じゃない言葉の隙間読んでいたから

薄皮が剥がれるように少しずつ冷めてきたのね私の熱も


 

01/03/19

ひとつずつ命の節目見届ける証書をもらう子らの眩しき

担任に一等迷惑かけた子の涙止まらず別れの言葉

春うらら母には巣立ちの寂しさや校門を出る人の言葉少なし


 

01/03/12

顔知らぬ人の言葉に胸打たる死に立ち向かう姿尊し

日常の数え切れない不幸せ振り返れば幸せの中

 


01/02/12

スカートのわずかなフリル春近し

味噌汁にそっと湯を足す病み上がり

日展の叔母の名前に胸突かれ思いたゆとうこれからの日々

抱き合う熊の写真に思い寄る許し合うこと慈しむこと

 


 

2001年2月4日

足下の明るさで知る冬の星

手術後の父の行状笑い泣き

福は内福は内とや豆を撒く

皮厚き蜜柑を剥く手四十六

パソコンで碁を打つ夫の喉赤き

道端のあれはセキレイ教えたや

足下の妙な明るさ見上げれば今降らんとす満天の星

隔てるはガラス一枚くつろぎぬ窓辺の薔薇の色やわらかなり

今来るか今来るかとぞ外を見る蜜柑を台に置き換えたれば

蓋のない急須でお茶を入れるかなカステラ二つ夫が切れば