短歌と俳句 または詩                    
   
早春  春   

失ったものに
気づいた時は遅すぎて
覚えているのは ただ
君の手のぬくもり
季節はめぐり 今
出会ったあの頃と同じ桜吹雪
二人でえがいた夢の中に
思い出閉じ込め
僕らは静かに消えていく

どんな暗い夜道も
都会のいらだちの中でも
覚えているのは ただ
君の手のぬくもり
眠れぬ夜を越え 今
別れの時をいろどる桜吹雪
互いに見つめ合った瞳の中に
思い出閉じ込め
僕らは静かに消えていく


02/04/11 (木)
地下鉄のガラスに映るおばはんよ顔を上げなよ涙をお拭き

離任の日重い花束くれた子の擦れた言葉左目の痣

 


 

01/04/30
薄暗き竹藪の隅に道祖神昔ながらの鐘の音を聞く

01/04/28
洗面所に虹のひとかけ見上げれば天窓の上は春の空かな

01/04/28
知らぬ間にフリージアの花咲き終わり

01/04/07
自転車の籠に一枝桜あり

01/04/06
メールにて送られてきた「月に夜桜」我が家の月も眺めて見たし

01/04/04
花冷えの美しき庭もの哀し

「春」―美しい季節―息子の旅立ち

神様がこの季節をくださったのは
別れの思い出を美しく装うため
神様が夜の時間をくださったのは
見せてはいけない涙を隠すため
神様が眩しい朝をくださったのは
あたらしい私たちを励ますため