短歌と俳句 または詩 

         早春  夏            


   図書館   02/07/30

なんだか懐かしい匂いだ

空気の流れが止まっている

隣にはこほんこほんと咳をする若い人

私の手には時を越えた人々の重い言葉

そして

私の心は柔らかくなり

誰かの夏の日を想い

視界の隅に白いシャツが入ってくるだけで

女優のように他愛もなく泣けるのだった

 


01/08/15

教科書の幼き落書きに手が止まり息子の部屋のそうじ終わらず

 

 

01/08/02

 

コップが落ちる

私のお気に入りの

コップが落ちる

底の方だけ藍色の

コップが落ちる

あの人の思い出の

コップが落ちる

スローモーションビデオのように

コップが落ちて行くのに

なすすべもなく

いとおしさも

くやしさも

感じないまま

床に落ちてしまった

千個のガラスのかけらを眺めている

それが私という人だ

 

 

 

01/07/29

 

幸せは

自分を正しく理解してくれる人がいるということ

自分以下でも

自分以上でもなく

私の言葉を

私の想いを

正しく理解して欲しい

 

今日は

ちょっぴり

幸せだった

ふう

 

 

 

01/07/10

 

私に足りないのは何?

純粋さだけでは生きていけない

分かっているでしょう

とあの人は言った

私に足りないのは

いわゆるやる気と言う奴なのだろうか

それとも素早く立ち回る賢さだろうか

あるいは物事の道理を見透かす広い心だろうか

 

どうにもならなくて

もがいている自分を

冷たく見ている自分がいて

滑稽に思っている自分がいて

おぼれるまでそうやっていろ

と言っている

少しは人生の苦さと言うものが分かったかな

なめんなよこの世間知らずが

と罵っている

 

 

01/06/27

 

美しい蝶になれるなら

いくらでも待ちます

青い空をひらひらひらひら

お花畑をひらひらひらひら

気ままに美しく

ひらひらひらひら

蝶になれるのなら

蝶になれると決まってるのなら

 

 

 

01/06/14

 

ふたつのかたまり

傷を負って

身を横たえている

何も考えず

傷をなめることもなく

静かに体を横たえている

時が癒してくれるのか

癒してくれる時を待つのか

ただ

お互いの存在が

この果てしもない淀んだ時を

耐えさせてくれる