自律訓練法って何?
自律訓練法はドイツのシュルツ博士によって開発された方法で、ストレスや緊張からくる身体症状を緩和し、心身ともにリラックスさせ、自律神経のバランスを回復させる治療法です。
自律訓練法のメカニズム
私たち日本人が「梅干し」という言葉を聞くとどうなるでしょう?
多量の唾液が分泌されませんか?
これは私たち日本人が梅干を何度も食べ、唾液を多量に分泌しているうちに、「梅干し」と聞いたり想像しただけで唾液が分泌されるという生理作用を起こす条件反射が形成されているからなのです。
条件反射はソ連のパヴロフが1950年に犬の唾液腺の研究をしていて偶然に発見したものですが(俗に言う「パヴロフの犬現象」ですね)、自律訓練法はこの条件反射を応用し体に薬理作用の整理反応を起こさせて治療に使う方法です。
自律訓練法の基本
簡単な自律訓練法の基本的な流れを紹介していきます。
- 自分がリラックスできる体勢をとります。
ソファーに腰掛けても構いませんし、ベッドに横になっても構いません。(寝る場合は仰向けに寝て下さい) - まず第1段階の「重量感」を感じる暗示を自分にかけます。
リラックスできる体勢で体の力を抜き、目を閉じて「気持ちが静かに落ち着いている」と心の中で唱えながらリラックスしているイメージを作り出してください。
リラックスしているイメージを保ちながら「右手が重い」「左手が重い」「右足が重い」「左足が重い」と順番にイメージを作り出し、手足の力が抜けていくのを感じ取って下さい。 - 第2段階は「温感」を感じる暗示をかけます。
第1段階と同じように「気持ちが静かに落ち着いている」というイメージを作りながら、「右手が温かい」「左手が温かい」「右足が温かい」「左足が温かい」と順番にイメージを作り出し、手足が温まるのを感じ取って下さい。 - 第3段階は「心臓が静かに脈打つ」イメージを作り出します。
リラックスした状態を保ちつつ「心臓が静かに脈打っている」と心の中で唱えながら、心臓が静かに脈打つのを感じ取って下さい。 - 第4段階は「呼吸」に関するイメージを作り出します。
今までと同じようにリラックスしているイメージを作りながら、静かに呼吸をし、静かに呼吸しているイメージを作り出してください。 - 第5段階は「腹部温感」のイメージを作り出します。
リラックスしながら「腹部が温かい」と心の中で唱え、腹部が心地よく温かくなってくるのを感じ取って下さい。 - 第6段階は「前頭部冷涼感」のイメージを作り出します。
今まで通りリラックスしたイメージを作りながら、「額が涼しい」と心の中で唱え、額の涼しさを感じ取って下さい。 - 最終段階は暗示の消去作業をします。
心地よく目覚めるイメージを作りながらゆっくり伸びをし、目を開けて下さい。
以上で自律訓練法の一連の流れは終了です。
リラクゼーションミュージックをBGMにしながらやるといっそう効果が増すと思います。(BGMを聞きながら訓練を繰り返す事により、BGMに対する条件反射が形成され、BGMを聞いただけでリラックスした状態に持っていくことが可能になります。)
BGMが無くても自律訓練法を繰り返せば先述の「梅干し」の条件反射のように、リラックスしているイメージを作り出すだけで、意識的にリラックスした状態を作り出すことが可能になります。
自律訓練法の効果
自律訓練法は人によってはマスターするのが難しいといわれますが、マスターすれば非常に多くの症状に効果があります。
自律訓練法の効果があるといわれている一部を紹介します。
- 自律神経失調症
- パニック障害
- 不安障害
- 高血圧
- 気管支喘息
- 頭痛・腰痛
- 不眠
- アレルギー疾患
- その他慢性疾患
自律訓練法は自己治癒能力を高める効果がある為、症状にあった訓練を行えば、ほとんどの病気に効果があると思われます。
例えば高血圧で悩んでおられる方は「気持ちがリラックスしている」「心臓が静かに脈打っている」というイメージを作り出す訓練を集中的に行えば脈拍を下げる効果があるでしょう。
このように自分の症状に合った訓練を行えばその効果は無限大に広がっていきます。
自律訓練法は人や症状によっては習得が難しく、根気が必要です。
マイナスのイメージを捨て、リラックスしているイメージを作ることが重要です。
自分で「自律訓練法をマスターするぞ!」と意気込んでも最初はなかなか上手くいかず、疑心暗鬼に陥ってしまうこともあるかもしれません。
まずは医師の指導のもとで適切な自律訓練法を受ける事をお勧めします。